<概説>
アメリカを代表する詩人アレン・ギンズバーグ。
自我が詩人に至るまでに、彼の青春時代には何があったのか。家族への愛。友人への愛。そしてただひとりへの愛。ありふれた殺人事件を起点として、そのすべてが男を揺り動かす。
<感想>
ダニエル・ラドクリフ×デイン・デーハン
この組み合わせに惹かれて視聴。つまるところ期待していたのは肉体的なエロティシズム。男性的な肉が交合し、すえた臭いのする官能を予見していました。
しかし私の心を動かしたのは、もっと抽象的なもの。
詩歌を専門的に扱っているわけではないものの、私自身専攻学問にする程度には言語を愛しています。
ある時はパワフルに。
ある時はポエティックに。
ある時はエロティックに。
言葉そのものが内包する力。
ほとんどの人々が意識することのない無形の力。
ソレは形がないからこそ、言葉を愛する人々は他の媒体に表現を仮託します。書籍という物質に。麻薬が生みだす非存在空間に。そして行為という別種の無形の力に。
それが余人からは浅薄な行為に見えたとしても、存在のないものを表現するには浅薄なものから始めるしかないのだから。
ゆえにアレンらの衝動的な行為には学生としての青くささと、言葉を愛している人間らしさを同時に感じます。
こればかりは分かれる人間にしか分かれない。
ラブロマンスではありますが、決して万人向けの熱が籠っているわけではありません。しかしこの作品を向けられた人々は、そっと花束をこの作品に差し向けるでしょう。