アキヒロ

キル・ユア・ダーリンのアキヒロのレビュー・感想・評価

キル・ユア・ダーリン(2013年製作の映画)
4.3
すごく好きだった。

名門コロンブス大学に入学したアレン。
詩人を父に持つアレンは既存の型にハマった文学論を唱える教授たちに反発しており、同じような思想を持つルシアンと出会う。
ルシアンは同性愛者で何人もの愛人がおり、アレンは彼らに嫉妬の念を覚える。

そんな最中、酔ったルシアンに「名文を書いてみろ」とそそのかされたアレンは、言われた通りに必死で気持ちを高揚させて文章を書くのに没頭。
その末にできた文章をルシアンに読んで聞かせると「お前が書いたのか?すばらしい」と絶賛され、アレンはさらにルシアンへの思いを強くする。

やがてアレンはルシアンとハーバード大出身のウィリアムらとともに「新幻想派(NEW VISION)」という派閥を作り、大学の図書館に飾られている聖書などを差し替えたり商船に潜り込んだり、前衛的で過激な活動を行うことで自分たちの思想をアピールし始める。
そんな中でアレンはさらにルシアンへの気持ちを強くしていく。
この落下していくように恋に落ちていくアレンがとても切なくて素敵だった。

「最初の案が最良」
つまり、アレンは初恋のルシアンへの恋心を"the best"と思っている。
ところがルシアンはジャックとの関係性を最重要視しており、アレンとすれ違いが起きてしまう。
同じくデイビットもルシアンに捨てられた男の一人で、デイビットはアレンに「俺とお前は似ている」と伝える。
デイビットは和解を求めるためにルシアンに会いに行き、ルシアンに殺され、
アレンはルシアンに似た金髪の行きずりの男とセックスをした。
逮捕されたルシアンはアレンにこの件を「名誉の殺人」として処理してほしいと頼む。

「名誉の殺人」は同性愛者に襲われた時、被害者が異性愛者の場合、加害者を殺しても"正当防衛"とする罪状である。
それは「被害者が同性愛者の場合は成立しない」。
ルシアンの荷物を整理していたアレンは、その荷物の中からルシアンの入院記録を見つける。
それはルシアンがガス吸引自殺しようとした過去であり、その身元請負人は、なんとデイビット。
「完璧な日」。二人は何よりも強く結ばれた間柄だった。
そんなデイビットをルシアンは手足をくくりつけ、生きながら殺した。

「何かを殺したとき、それは永遠に君のものになるのかもしれない」
『Kill Your Darlings(最愛の人を殺せ)』、
それはルシアンにとってのデイビットであり、
アレンにとってのルシアンだった。
彼らは最愛の人を殺すことによってその詩霊を手に入れたのかもしれない。

アレンはルシアンを殺すことに失敗したようだが…
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