イチロヲ

陰獣のイチロヲのレビュー・感想・評価

陰獣(2008年製作の映画)
3.5
来日したフランスの探偵小説家が、謎多き覆面作家の正体を探ろうとする。江戸川乱歩の原作をフランス資本で映画化した作品。70年代ヒッピー映画で脚光を浴びた大ベテラン、バルベ・シュローデルが監督を務めている。

乱歩のエッセンスを基調にしながら、フランス映画ならではのアレンジが施されている。フランス語が話せる芸妓が原作の静子の位置付けになっていたり、静子の夫がヤクザに変更されていたりするが、「芸妓の存在意義」を絡めた展開は見応えあり。

サポートしている日本人スタッフの尽力のおかげか、ナンチャッテ日本文化がほとんど登場しない(珍味としては薄口になっているが)。居酒屋で注文する場面など、日本映画では描かれないやり取りが、本編で使用されているところも興味深い。

凡庸なエロティック・ドラマと勘違いされそうなパッケージだが、その実態はまともなミステリー映画。本作品は、レンタル屋の暖簾の奥にひっそりと置かれており、あまつさえ邦画と間違えられている始末。何とも、虚しいことだ。
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