シネマスナイパーF

薄氷の殺人のシネマスナイパーFのレビュー・感想・評価

薄氷の殺人(2014年製作の映画)
-
死、女、ネオン…順番にこれを見せていくだけで引き込んでくよね
そして長回し
そりゃあ引力ヤバいよ
疑惑の赤の魅力もいいわね〜
ファム・ファタールが超色っぽいけど、映画自体も超絶色っぽい
もったいぶった長さが特徴だけども、実はテンポそんなに悪くない
カッコよすぎるのよこの映画


画面に釘付けになる長回しは本当にわかりやすい個性
引きの冷めたショットだけでなく、時に主観でも長回し
あの序盤の美容院のシーンが凄すぎて、飛び蹴りからの椅子飛び出しには驚愕で、オープニングからここまでで完全に心掴まれました

ワンシーンが長いけど、それでいて場面の切り替わりは強引で行間の詰め方がエグい
このバランスが今以上はないんじゃないかっていうぐらいに良い
画で分からせることに特化してる
雪を活かした追跡描写は的確
ワンカットはそれなりの量の情報を詰め込めるので、言葉で説明せず映像で示せるのよね
頭に残るシーンも多く、序盤の美容院、中盤のスケートシーンはもちろん、白昼の花火を訪れたとこの周囲から浮いたネオン感が本当に最高

話はシンプルなんだよな
その方が監督のクセは出しやすい
演出、撮り方で長くなる分には大いに楽しみますよ
物語こそ映画ってわけじゃなんで
もう妻との愛は消えた主人公側と、愛ゆえに歪んだ状況が起きているファム・ファタール側という対比、それぞれの二人組がお互いの手をどうしていたのかなど、人間模様が面白い
切断された手、絡み合う手、顔を隠す手、動かせないふりをする手、繋ごうとする手…
怪我した手に対する気遣いがトリガーになるのも納得がいく
分かりやすいじっくりとしっかりと映し描いているんだから、映画演出の姿勢として正しいし、それでいて独自の色を出せているんだから立派すぎるでしょ
それでいて根底にあるのは格差社会の闇であり、馬やダンス等の突発的な異物を混ぜてクエスチョンマークを増やしていく
ノワールとして完璧じゃないですか


映画は画と演技で語るもの
恍惚としてしまうわ