カラン

インポート、エクスポートのカランのレビュー・感想・評価

インポート、エクスポート(2007年製作の映画)
4.0
ウクライナで看護師をしている女が給料の未払いが続いて、ビデオチャットで尻の割れ目を見せるような仕事も続かず、オーストリアへ移動する。オーストリアで警備をしている男が酔っ払いに絡まれて仕事を辞め、頭のおかしい継父の仕事でウクライナにやってくる。


パラダイス3部作同様に、ザイドルは人物たちをいじめ抜く。じくじくと弱いところをついて、苦悶の姿を捉えるショットを導こうとする。いつでも大変な事故に繋がってしまうのじゃないかとはらはらするくらいに、追い込んで、追い込んで、、、特に何もない。ただ、また別のシビアな場所に移動する。

何がいいんだ?苦味の魅力だろうか。

撮影やロケは素晴らしい。セミプロなのだろうか、キャスティングも素晴らしい。ただ最も素晴らしいのは、死の寸前でほとんど正気を失っており、本物の病院患者なり介護施設利用者なりが、あるいはスロバキアの貧民街の人々が、画面の隅々に配置されて作り上げる尋常ではないリアリズムである。この辺はドキュメンタリー畑上がりの映画監督ならではの、スペシャリティなのだろう。誰だか分からない介護施設か終末期医療の大部屋で、婆さんたちがいっぱいベッドに並んでいて、うめき声をあげている。絶対にここに入りたくないと思わせておいてから、舌がべろべろしてしまう老婆が、トート(死)と、呟き続けて映画は終わる。


レンタルDVD。音は2ch。55円宅配GEO、20分の12。
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