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牙狼之介のmitakosamaのレビュー・感想・評価

牙狼之介(1966年製作の映画)
3.6
スカパーにて。五社英雄がまだフジテレビ社員の頃の作品やね。わずか70分程度のモノクロ時代劇ではあるが、五社の非凡が映像の隅々まで染み渡っている。

何より驚きなのが「牙狼之介」が「がろうのすけ」じゃなく「きばおおかみのすけ」だったことだ!フルネームだったんかい!なんちゅう名前…。

浪人・牙狼之介(夏八木)が立ち寄った宿場町で問屋場の盲目の女将に協力し、江戸の勘定奉行まで届ける三万両を護衛することとなる。
その三万両を悪代官らが狙い、刺客を送ってくる。敵の用心棒(内田良平)が強者だが、裏切り金を横取りしようと画策。三すくみの対立になる。
三万両輸送の日、用心棒と悪代官らが襲撃。だが、千両箱の中は石ころで囮だと判る。
悪代官らは盲目の女将を捕まえ拷問するが、用心棒が助ける。実は女将と用心棒は生き別れの夫婦。最終的に牙狼之介と用心棒は一騎打ちで戦い、勝った牙狼之介は女将を残して立ち去る。

西部劇っぽい雰囲気に黒澤明テイストが絶妙にマッチした作風で尺も短く飽きさせない構成は流石。物語の構造も面白いのだが、何よりアクションが迫力あって良い。

牙狼之介は大勢の相手と斬り合う際に、基本的に一旦下がるのだ。そして柱や手摺りなどを楯にして戦う。狭い通路などに逃げて相手を誘い込み1対1になってから戦う。三船の用心棒の様な豪快さとは似て非なるのが判る。
また居合いとして構えが独特だ。腕を交差してテニスラケット持ってるみたい。でもサマになってる。ラストバトルも怪我した相手に合わせ自分の片手も紐で結び対等に戦うという徹底ぶり。

知ってる俳優も少なく強いて言えばエンタツくらいだ。低予算だが、全編臨場感があり安っぽさが微塵もない。
また女同士の争いが必ずあり、女の業を描く五社の作風が既に垣間見えるね。
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