雨宮はな

ハッピーエンドが書けるまでの雨宮はなのレビュー・感想・評価

2.0
ただの虐待と犯罪の話。
ここで語られる「愛」は全て「自己愛」でしかなく、非常に恐ろしいものだった。

これは全くハートフルストーリーでも家族愛を扱ったものでもなく、普段「愛」だと言われがちなものが非常に危険な凶器であることを表現したもののように思える。
原題は『Stuck in Love』で「愛で身動きできない」だから、とてもよく作品を表しているのに、邦題が邪魔をしている。
(stuck in「~で立ち往生する、~で身動きできない」)

出てくる人物はクソ人間ばかりだけど、原題を踏まえると非常に興味深く観ることができる。
邦題は明らかにおかしいけど、それでもハッピーエンドには程遠い。

父親は威厳のために過去を隠すわ、日記とお小遣いを絡めて生活と精神の支配と経済的DVを両立させるわ。
元妻は被害者意識で子供を虐待し続ける。
娘は自分が傷つかないことと自分が楽しい事だけは敏感で他人に関心がなくトラブルを起こす。
息子は承認欲求を性的に誤魔化そうとする。
娘の彼氏はただのストーカーだし個人情報を盗むがっつり犯罪者。

身近な人間の肉親が死んだことで不安になって、不倫した母親を赦してしまうのは「なんだかなあ」という感じ。
そこで肉体的な母親をアテにしてしまうことで、結局彼女が自律できていないことを示していて“愛”で身動きできない」が完成してしまっているのがわかって苦々しかった。
最後なんてテーブルを一緒に囲んでしまってるし。
雨宮はな

雨宮はな