イチロヲ

悪徳の栄えのイチロヲのレビュー・感想・評価

悪徳の栄え(1988年製作の映画)
3.5
悪事と快楽の相関性を考究する演出家夫婦が、本物の犯罪者を雇用した劇団を発足する。サドの同名小説を劇中劇に取り入れている、エロティック・ドラマ。日活がロマンポルノ終了後に展開させた、「ロッポニカ」の作品。

サド公爵に感銘を受けた演出家(清水紘治)が、サド文学の世界観を具現化させるべく、自分の妻(李星蘭)を新人俳優に寝取らせてしまう。いわゆる、"虚実の狭間"へと落ちていくパターンであり、サドの思想が現実世界に侵食してくる様子が描かれる。

セリフ演技を主体とした観念的な作風となっているため、酒池肉林のエログロ・ショーは登場しない。だが、その一方で、昭和初期を再現した和洋折衷の舞台美術と中島葵のサディストぶりは見応えあり。女中(?)に木築沙絵子がいるところも注目ポイント。

サド公爵のエロティシズム論と実相寺監督の演劇哲学を組み合わせながら、倒錯の中に"人間の本質"を見いだしていく。「薄めて嵩増ししたロマンポルノ」という言い方もできてしまうが、性衝動を原動力としたカオス状態を感受することができる。
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