やっぱり好きなの。ドゥニ・ヴィルヌーヴ。
母なる「支配」に重なる蜘蛛のモチーフと、「もう一人の自分」との対立の描き方が上手い。というか表現を試みている感じが好き。きちんと『映画』してる。電線やらガラスのヒビやら、「映すねぇ映すねぇ」とか言いながら見ちゃいます。そしてラストの画。インパクトあるなぁアレ。
ヴィルヌーヴお得意の、なんだか眠たげで無気力なリズム感が相変わらず心地良い。今回はトロントの何とも寂しげで虚ろげな都市風景を舞台に、画面はやたらと黄色い。これらが何とも言えない夢遊感を醸しており、映画全体が心象風景であると考えてもおかしくないような解釈の余地・幅を持たせてくれている。
男の行き着く先ってやっぱりリビドーに則ったクズ男か、『ママン』に支配されるマザコンかの悲痛な二択になるのでは?
とは言わずとも、ヴィルヌーヴらしい表現と画の遊びに可愛げがある一作。