生永這人

複製された男の生永這人のネタバレレビュー・内容・結末

複製された男(2013年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

「く・・・蜘蛛オチかーい!!!」(観客たちは逃げるように消えた)

瓜二つの自分とのエンカウンター。この手の映画に対する私たちの「期待」というのは、その存在原因あるいは理由にあると思います。予想できる範囲では「双子」「パラレルワールド」「精神疾患」と最低限ですが挙げられましょう。で、観客はこの予想を裏切ってくれることに愉楽を求めるわけです。

本作が「精神疾患」ないしは「病的依存」からの脱却を具現しているとすれば、二人は同一人物ということになります。このことは、自分自身ともう一人の自分が対峙する場面をモノローグと解し、さらに二人の女との計四人が同時に画面内に存在することがなかった意図的な描写に照らし合わせれば筋が通るのではと思われます。
いっぽう、「蜘蛛」について。何を表象させますか?「斬新」だの「難解」だのレビューでは飛び交っていますが「想定外」の結末が必ずしも伏線を見事に拾ったミステリーと評価できるとは限りません。早計ではないでしょうか。もっとも、蜘蛛の巣のようにネット状に張り巡らされた「伏線群」の産み手だった、そのように解釈できるかも分かりません。しかし、それでは何でもありの「カオス作品」になってしまうではないですか(あ、いいのかそれで)。「蜘蛛」をオマケ程度に見ればちょっとしたお得感があるようなないような。

ただ、自分の中では確立した解釈は(まだ)ありません。それゆえ点数は控えます(が、男が女と寝ているとき、あまりの退屈さに寝てしまったのはここだけの秘密です)。醍醐味がまったく掴めなかった作品も珍しいものです。助けて。

少なくとも、カフカなどに疎い私にとっては新鮮ではありました。これを機に原作を手にとり「文学」への一歩を踏み出したいと思う次第です。

「つまらなかった。本当につまらなかった」で終わりにしたくない挑戦的な作品。
生永這人

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