前回に引き続き、個人的な思い出が蘇る映画。
「オイっ!オイっ!オイっ!」
このロックのライブ特有のノリ。
昔、バンド活動かじってたこともあり、個人的には耳慣れた定番のノリ。
高校卒業したぐらいの時に若気の至りで渋谷で年越しにクラブに行ってみた。
ダンス系のイベント。そこで、調子に乗ってやってしまった。拳を高らかに、
「オイっ!オイっ!オイっ!」
多分、俺らと同じく、青臭い不慣れな奴らもいたのだろう。聞き慣れたロックのノリを聞きつけて、俺らと一緒に、
「オイっ!オイっ!オイっ!」
これ、まずかった。会場中がロック色。
本来のお作法ではなかったらしい。
ダンス系の本家のお客様方々が怒り出す。
DJも「てめぇら、ノリがちげぇぇYO!」とマイクで大声で怒り出す。
空気が何か変な感じになってきたことを察知し、自分たちのせいではない風に、口笛でも吹きながら的に一目散にクラブから逃げ出す。
年越しどころではない。
そんな、ロックのノリ。
そんな若き日の出来事を思い出した。
さてさて。
挙動不審の売れないバンドマン野村周平。
破天荒でおちゃめなスター歌手二階堂ふみ。
この「音楽映画」企画にまた新たな風が吹いた。
2人のキャラが良い。
まったく落ち着きのない奇怪な動きをする野村周平と、なぜかそれにカリスマ性を感じて近付くスター歌手。なかなかハマってた。
前情報も入れないまま、とにかく観てみた。
それで、こんな突拍子もないキャラと勢いテンションMAX先行型で幕が上がるもんだから、かなり面食らった。
が、しかし。
その先に、結構王道の展開が待っていた。
突拍子もないかなりの変化球からの王道。
だから、前半は乱気流に揉まれて揉まれてどこ行くのかー、何の話だー、からの後半。
あることがキッカケで急に、1つの帰結に向かう。ビシッーと急に目的が見え始めて整い始める。
それこそ、この主役2人がこんなキャラで散らかしながら納めに入れる技量。投げ技も、寝技もいけます、的な。
もう、二階堂ふみ、そりゃのめり込むよ。こんな理解者がいたら。
それがそんなことになったら、そりゃみんな必死になるよ。
それまで、彼女以外、誰も見向きもしてくれなかったんだから。女神かよ、と。
そんな彼女のためなら何でもするよな。
「俺のぉぉぉ、俺のぉ店がぁぁぁぁ、燃えてるぅぅぅぅ!俺のぉぉぉ、みせがぁぁぁああぁぁ!もえてるううぅぅぅ!うぉぉぉぉぉ〜」
竹中直人、まじ笑った。
この作品の竹中直人は、意外にも意味不明テンション系ではなくて、真面目に泣き笑いさせてくる系。そこが良い。
意味不明系のテンション系で始まる映画に、真面目系の竹中直人。いつもは逆。これが結構刺さる。
バンドの曲も、二階堂ふみの歌も、ジャンルは違えど、耳馴染みの良いキャッチーさがあり、普通に良かった。
歌詞も独特で結構インパクトもあって記憶に残る。
普通の良い映画です系ではないのだけど、他にはない突き抜けた感じがあるし、主役2人が映えてるし、それを固める脇役の主張もすごいし、とっ散らかってるけど、楽しめた。
ラストの写真で見せる感じも「ほーぅ、良かったな」って思えた。
ホントにクソみたいなバンドが人の価値観や、生き死にや、下手すれば世界も変えれるのか?と期待を抱ける作品。