あ

石の微笑のあのレビュー・感想・評価

石の微笑(2004年製作の映画)
4.7
男が階段を降りる時

電話中にフェラされて「やめてくれよ」は笑いました。

石像に魅せられる様は「突然炎のごとく」、石像に似た女に魅せられる様は「めまい」、階段を登り降りして違う空間に出入りする様は「女が階段を登る時」を思い出させて、色々な名作の面白さを煮詰めたような映画でした。

特に石像を家から家へと移動させて行く様が面白く、チラッとジェラールの家の中に見えた石像が家のクローゼットから出てきて、最後はセンタの半地下で微笑んでいるという一連の移動は、あたかも石像がフィリップを使って居所を探していたみたいでした。こういう物に魂がしっかりと宿る映画は面白いです。

また、思い切ったシーンの切断が、結局フィリップ、センタは人を殺したのかという問いの答えを最後まで焦らしたところもお得意の技といった感じで、そればかりではなく、センタの不在が石像の存在を際立たせていたことで、最後までアブノーマルなお話がしっかりと持続していました。

また、半地下という空間が、石のように青白い独特なカラーリングを生み出していたり、間の階に家族の空間を入れたことで絶妙なスリルが生まれていたり、最後の最後でカメラごとセンタの家に入って行く様を撮らなかったことで、半地下の非現実さが際立っていたりと、見事なロケーション選びと、その利用法が光っていました。

役者さんの顔選びも良く、センタ役の方はヨーロッパではあまりお目にかかれなさそうな魅力を持った顔をしていたので、よく見つけたなと思いました。

シャブおじさんの作品は、日本未公開作などの変な角度から入ってしまいましたが、むしろそれらの作品の毛色がこの作品にもかなり現れていたため、余計に楽しむことができ、新文芸坐のセレクトに感謝です。
あ