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石の微笑のRのレビュー・感想・評価

石の微笑(2004年製作の映画)
4.5
僕が世界一好きな監督のひとり、クロードシャブロル監督による一風変わった珍作、石の微笑をひさびさに見てみました。これで見るの3回目。やっぱいいですねーシャブロルは!!! こんな妙ちくりんな空気感の映画を作る人、ほかに見たことない。主人公のフィリップは、なかなかのイケメン、まじめで、家族思い、職場でも営業マンとして活躍してるが、なんとなくボーッとすっとぼけた印象の若い男。彼は、妹の結婚式に、ブライズメイドとして来ていた女を一目見て、心惹かれる。女も彼をじっと目で追い、興味深々の様子。こういう視線を送ってくる女は絶対アブナイから気をつけて! 僕もむかし何度かありました。めちゃくちゃ怖い思いした。危険!!! センタと名乗るこの女、たいして美人というわけでもなく、むしろ全体的にボテっとしてて、顔も変な癖がある。では、なぜフィリップがセンタに惹かれたかというと、お家の庭に飾ってある石像に似てるから。センタのむっつりアグレッシブでセクシュアルな誘惑にまんまとひっかかるフィリップ……たいへんエロい、ムチムチのセンタにすぐ夢中になる様子はまるで犬のよう。センタは言います。わたしを愛してるなら、4つことをして愛を証明してほしいの、と。木を植えて。詩を書いて。同性とセックスして。そして……人を殺して。正常な人間ならこんなこと言われたらドン引きするのですが、メロメロのフィリップは大して気にも止めず。僕ならば簡単なヤツからやるだろうから、同性とセックスかなぁ🤤と思ってたら、フィリップ君、そっちからいっちゃいますか。しかもそんなズルしますか。てな感じで、どんどんセンタの意味不明な闇に引きずり込まれ、人生をかき乱され、仕事も家族もなおざりになって、不如意な生活に陥っていく様子が描かれる。なんと言っても本作の最大の魅力は、ミステリアスなようであってそうでもないような、ドラマティックとは言えないけれどドラマティックでなくもない、ユーモアもあるけどフラットなのでぜんぜん笑えない、けど変にじわじわおもしろい、テンポ遅いような気がするけど、気づけばポンポン進んでる、メインのストーリーと関係ないところが強調されてなんだコレ? 鮮明な感覚からぜんぶが微妙にズレたる不思議な不確かさ。これが見てて非常にに面白い。こんな変な感じを出してくる監督ってシャブロルともう二人くらいしか思いつかない。そとはかとない漠たる魅力。あと、映像の冷たい色合いもとてもいいし、すべてのショットに眼の離せない不思議な魔力がある。音楽は、シャブロル作品には欠かせないマチュー シャブロルの妖しい旋律が始終鳴り響き、ミステリアスな雰囲気を盛り上げてくれる。この音楽がなかったら、ただ単に滑稽なだけのチープなサスペンス見えていたかもしれないなってくらい、いい味を出している。そんななか、ぼーっとお馬鹿なフィリップを演じるのがブノワ マジメル。この人ほんま頭悪そうな男の役が似合いますねー。僕の好きなタイプの顔ではないけど、たぶんかなりのイケメンのはず。で、彼の母を演じるのがオーロール クレマン。この女優さんのエレガントな歳のとり方……かっこいい……けどさすがフィリップのお母さんやから、かなり阿呆なんですねー。夫には出ていかれ、男には騙され、娘は万引きして警察沙汰。散々です。やっぱ生きていくのって賢さが絶対いる。どんだけへこたれてないフリしても、ひとつひとつかなりダメージ食らってるっぽいし、賢くないと騙されてばっかになってまう可能性あるから、もっと賢明に生きて! ほんで、まー、まさかそうくるかと、戦慄のメンヘラ展開が繰り広げられたあと、ものすごいホラーなシーンで、えーーーーー!!! そこで終わりーーーーーー!!! とビックリ仰天バッサリ終了。こういう思い切りの良さも好きです😍 やっぱりいいなーシャブロルは。あ、最後に、もうひとつ好きなのが、キスシーン。細かくたくさん出てくるんやけど、そのどれも、ちゃんと舌と唾液がからまる音がして、生々しくて好き。あ、あと、うんこ踏むのも。てか、4つの要求の残りは、結局どうなったのだろうか……楽しみにしてたのに……
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