黄推しバナナ

紅い眼鏡の黄推しバナナのレビュー・感想・評価

紅い眼鏡(1987年製作の映画)
5.0
原作・脚本・監督 : 押井守による、後にケルベロス・サーガと呼ばれる押井初実写監督映画初作品である。

宮崎駿が言わんとした、「アニメクリエイターはアニメクリエイターであれ」と言ったニュアンスの言葉を “押井守 ”に残している通り、後世まで遺してしまった不名誉な作品である。

この事により1987年〜2016年に至るまで世間にアニメクリエイター or 漫画家が実写映画作ってもつまらん作品ばかり作る!とレッテルを貼られる事になる…

押井守

庵野 秀明

大友 克洋

原恵一

因みに2016年は庵野 秀明監督、シン・ゴジラである。シン・ゴジラの大ヒットにより世間の目は変わってきたと言えるだろう。

1987年〜2016年…29年間…

それほどまでに「紅い眼鏡」は罪深い作品なのである…

………

が、私は断固として言おう…

この作品の偉大さを分からない “人達” こそ罪深き者たちなのだと!

私は、幼少期近くのレンタル屋でVHSの「紅い眼鏡」をパッケージ借りしたのを切っ掛けに “押井の沼” にハマった。
一度鑑賞したときは鑑賞者になんの配慮も無い…分かってもらおうともサラサラ思って無い内容とセリフの多様で…「つまんな!」と思った…

だが、時間が経つに連れ…
あそこのシーンおかしくない?となり、また鑑賞する。
さらにあそこのシーンおかしくない?となり、また鑑賞する。

それを何度も繰り返した思い出の作品。

今作は、
うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー(1984年制作)でまだ “押井守” の本質を出し切れなかった…そんなフラストレーションの溜まった押井守監督が発散する為に作られたのではないだろうかと思う出来栄えになっている。

今は数え切れない作品を見てきた経験があるため、この作品の凄さが超絶分かる。そういう事で今のスコアは↑あれです!

あの当時のスコア→3.0これだった…
しょうが無い…
時代が追い付いていない…
遥か先の先のまた先を行き過ぎた…


⚠ ここからは作品の内容と私の作品への考察になる為ネタバレになります。

作品を見てからレビューを見る事をオススメします。






物語は、
二十世紀末、凶悪化する都市犯罪に対抗し、警視庁は特捜班を結成した。特殊強化服と重火器で武装した彼らは “地獄の番犬 / ケルベロス” の俗称で呼ばれ、犯罪界に対し果敢な挑戦を開始する。だが、非情な捜査活動に世論の非難が集中やがてその組織は解体を余儀なくされてしまう。
一九九五年六月一五日首都圏対凶悪犯罪特殊武装機動特捜班は警視庁通達第209号をもち解体を決定。彼らの一部は武装解除を拒否し、後に「ケルベロス騒乱」と呼ばれる事件に発展。それは当局の熾烈な弾圧と決起者全員逮捕をもって終局を迎えた。
弾圧の下、元特捜班上級刑事ケルベロス第一小隊の、
都々目紅一(千葉繁)
鷲尾みどり(鷲尾真知子)
烏部蒼一郎(田中秀幸)
の3人は逃走し激闘の末、みどり・蒼一郎は逮捕、紅一だけがヘリで脱出した。三年後、国外逃亡を続けた紅一が手には少女(兵藤まこ)の写真とトランクケースを携えて東京に帰ってきた。ホテルに入った紅一。シャワーを浴びている際に紅一を襲うコマンド軍団。街に逃げた紅一は映画館に入る。人一人いない館内、画面には、少女が映る。トイレに入った紅一は、伝説の立ち喰い師、月見の銀二(天本英世)の居場所を聞く。二年前、立ち喰いソバ屋は条令で禁止されていたのだ。銀二に会った後、紅一はソバを食べた途端激痛に見舞われ、公安課刑事の室戸文明(玄田哲章)に捕まり拷問部屋で散髪屋の椅子に括り付けられ拷問を受ける。からくも脱出に成功した紅一はおちぶれた蒼一郎と再会。蒼一郎に振る舞われた猫印のカップ麺を食べ再び激痛に襲われる紅一は、また拷問室に戻っていた。文明の横にはみどりがいた。拷問の後みどりが空きをついて紅一を脱出させる。彼女の舞踏研究所での語らい。舞踏研究所を後にする紅一。後ろ髪を引かれ舞踏研究所に戻る紅一。金属製タライで殴られると少女のアップと少女の「犬のおまわりさん」。紅一がふと気づくと映画館。みどりと蒼一郎の過去が銀幕に映され、横にいる文明が尋問する。コマンド軍団に囲まれた紅一は蒼一郎の捨身の作戦で逃亡。みどりの助けでこの街を出ようとする。ソバ屋も消え、撮影機器が置かれた映画館の二階から幕をくぐった先は蒼一郎の部屋の撮影セット。そのセットの壁を壊しながら先を進むとそこは拷問部屋。拷問部屋でサンバの曲が流れ文明が曲に合わせて踊りだす。階段を登った先は映画のフィルム缶倉庫。タクシーの中で目を覚ます紅一。タクシーの運転をしていた文明も人形に変わり、撮影機材に囲まれた走ってないタクシーに。さまよい続ける紅一の前に少女が現われ、少女の導きで紅一はケルベロスと対峙する。次の瞬間ホテルのシャワー室で頭を撃ち抜かれた紅一。死体を見守る文明、コマンド軍団、みどり、蒼一郎、銀二。文明の指示で紅一のトランクケースを開ける蒼一郎。中には沢山の赤い眼鏡。少女はタクシーに乗る。タクシーの運転手(大塚康生(声は永井一郎)が喋りだす “我々人間は夢と同じもので織りなされている”。すべての現実は幻想のくり返しなのか。夜明けの街、少女はタクシーに乗って去っていく。

☑ 作品の構成

【カラー画面】
紅一、みどり、蒼一郎の“3人”の逃走・戦闘
紅一だけヘリて国外脱出
「紅い眼鏡」タイトル
【セピア画面】
三年後…航空に紅一
エレベータで下の階に
エレベータ内 “少女のポスター” ※1
階段を下る→長い通路を進む
紅一の後を追う文明の姿が
紅一はタクシーに乗るフリ
発進したタクシーを追う文明
紅一はタクシーを拾う
オリエンタルホテルへ
車内で“少女の写真”を取り出す
写真の裏には「007 718 211521 猫のイラスト」
社内の“黒電話で連絡”
電話の相手に紅一【セリフ】→「1995年夏、人々は溶けかかったアスファルトにおのが足跡を刻印しつつ歩いていた…酷く暑い」
オリエンタルホテル到着→部屋に→シャワーを浴びる
文明とコマンド軍団到着
文明【セリフ】「殺すな!生け捕りにしろ」※2
“片桐はいり似”の隊長の指示で部屋に突入
“片桐はいり似”の隊長撃たれて死亡※3
コマンド軍団死亡
紅一はタクシーでホテルから逃亡
立ち食い蕎麦を求めて映画館へ
少女のポスターが辺り一面貼ってある
映画館受付に少女と猫
1人で映画鑑賞する紅一
スクリーンには少女
“寝落ち”から覚める紅一
館内から出ていくチンピラ
便所でチンピラから月見の銀二の居場所を聞き出す
潜りの立ち食い蕎麦屋へ
月見の銀二と再開※4
てんたまも月見もないそばとうどん
銀二に毒を守られる紅一
突然の腹痛→“気絶”
文明の拷問部屋
死んだはずのコマンド軍団
酒攻めの拷問
空きを付いて逃亡する紅一
賭博ビリヤードでボロ勝ちした蒼一郎
逆恨みの893
逃走する蒼一郎
周りには少女のポスター
純喫茶「再会」で紅一と蒼一郎再会
周りには少女のポスター
893にタライで頭を強打される紅一→“気絶”
蒼一郎の部屋
紅一と蒼一郎カップ麺を食べる
蒼一郎に毒を守られる紅一
突然の腹痛→“気絶”
文明の拷問部屋
水攻めの拷問
文明の女、みどり登場
「磁石と砂鉄」の話※5
みどりの助けで紅一とみどり逃走
みどりの舞踏研究所
舞踏研究所を後にする紅一
辺りには少女のポスター
後ろ髪を引かれ舞踏研究所に戻る紅一
タライで殴られる→“気絶”
少女のアップと「犬のおまわりさん」
紅一目が覚めると映画館
横には文明※6
スクリーンには少女
コマンド軍団に囲まれた紅一
蒼一郎の捨身の作戦で紅一逃亡
撮影機器が置かれた映画館の二階※7
みどりの捨身の作戦で紅一逃亡
映画館の二階から幕をくぐった先は蒼一郎の部屋の撮影セット
セットの壁を壊しながら先を進む
文明拷問部屋セット
拷問部屋でサンバの曲と踊る文明
階段を登った先は映画のフィルム缶倉庫→コケて“気絶”
タクシーの中で目を覚ます紅一
鳴る電話に出る紅一
紅一【セリフ】→「1995年夏、人々は溶けかかったアスファルトにおのが足跡を刻印しつつ歩いていた…酷く暑い」
タクシー運転手【セリフ】「あの日(解散式)は雨だった」「一着の強化服を持ち出したった1人で逃亡」「持ち出された強化服は未だ発見されておらず」※8
タクシーの運転が文明
タクシーから飛び降りる紅一
文明は人形、撮影機材に囲まれた走ってないタクシー
映画撮影所を後にする紅一
さまよい続ける紅一の前に少女
少女の導きで紅一は雨の中ケルベロスと対峙
ケルベロスに撃たれる紅一
次ホテルのシャワー室
頭を撃ち抜かれた紅一
文明とコマンド軍団
みどり、蒼一郎、銀二
紅一のトランクケースを開ける蒼一郎
中には沢山の赤い眼鏡※9
文明【セリフ】「またか…一体いつになったら本物のプロトギアが出てくるのだ」※10
みどり【セリフ】「やりきれないわね」
銀二【セリフ】「全くだ」
運び出される紅一の死体袋
少女はタクシーに乗る
鳴っている電話に出る少女※11
電話の向こうから声が聞こえる
「1995年夏、人々は溶けかかったアスファルトにおのが足跡を刻印しつつ歩いていた…酷く暑い」
タクシーの運転手(大塚康生(声は永井一郎)が喋りだす “我々人間は夢と同じもので織りなされている”※12
【カラー画面】
シートに座る少女
夜明けの街
少女はタクシーに乗って去っていく
エンドロール


果たして…

紅い眼鏡とは何なのか?

☑ 幼少期の頃の考察



空港

タクシー→紅一電話

ホテル→紅一殺される

タクシー→紅一眠り

映画館→紅一映画を見ながら眠る

立ち食い蕎麦屋→紅一気絶

拷問部屋→紅一気絶

アオの部屋→紅一気絶

拷問部屋→紅一気絶

以下省略
※作品の構成参照

タクシー→少女→紅一から電話

ループ
❶へ

※1. 少女→映画の傍観者=押井守、スタッフ、キャスト、鑑賞者

※2. 冒頭の文明「殺すな!生け捕りにしろ」に対して、ラストのシャワー室で死亡した紅一は辻褄が合わない。「眠る」「気絶」で別の物語とリンクしている可能性がある。

※3. “片桐はいり似”の隊長撃たれて死亡&コマンド軍団死亡したはずが、文明の拷問部屋で生きているのは辻褄が合わない。「眠る」「気絶」で別の物語とリンクしている可能性がある。

※4. 立ち食い蕎麦屋と月見の銀二→立喰師シリーズ、押井守監督の空想の職業で「立ち喰いのプロ」のことを指す。タイムボカンシリーズ、うる星やつら、パトレイバーに登場。立喰師列伝という単体映画も存在する。

※5. 磁石と砂鉄の話→自由意志はない=作品に自由意志はない=作品の世界は完成されていない。

※6. 映画館で紅一と文明→構図と話の内容とループと言うカテゴリ、以前レビューしたリチャード・ケリー監督の「ドニー・ダーコ」は「紅い眼鏡」に類似する点が多すぎる。リチャード・ケリー監督は100%に近い確率で「紅い眼鏡」を見ていると思われる。私が「ドニー・ダーコ」の考察で導き出した答えに至った経由は幼少期の「紅い眼鏡」の経験があったからである。

※7. 撮影機器が置かれた映画館の二階、蒼一郎の部屋の撮影セット、フィルム缶倉庫、撮影機材に囲まれた走ってないタクシー→現実と幻想=現実と映画=押井守と映画=押井守の思想

※8. 紅一のセリフとタクシー運転手のセリフ“雨”だった点と“1人で逃亡”の辻褄が合わない。「眠る」「気絶」で別の物語とリンクしている可能性がある。

※9. 紅一のトランクケースの中のプロトギアを探していることが分かる。

※10. 文明のセリフで「またか…一体いつになったら本物のプロトギアが出てくるのだ」→「またか」「いつになったら」のセリフで分かる通り何度も同じ事をしているのが伺える。同じく、みどりも「やりきれないわね」、銀二も「全くだ」と言っている通り何度も同じ事をしているのが伺える。

※11. 鳴っている電話に出る少女→少女の電話先は紅一で冒頭のシーンのセリフが出てくるという事はループしている事が分かる。

※12. タクシーの運転手セリフからして、「すべての現実は幻想のくり返し」=現実と幻想=映画、夢、空想、願い、と言う事が伺える。

映画=押井守監督の頭の中の思いを具現化したもの

夢=監督や出演者の○○のような作品が実現したら良いのにといった思い

空想=鑑賞者側からの、エンディング後には○○の展開になって、それで○○になっていくと言ったイマジネーション

願い=鑑賞者側からの、あの場面は○○だったらこの作品はもっと面白くなっていたと言う評論

 映画、夢、空想、願い
 ↓  ↓  ↓  ↓
   紅い眼鏡
     ↓
 人々の思想の集合体
     ↓
紅い眼鏡に携わった人の数だけ絶えずアップグレードを続ける
     ↓
   無限ループに陥る



☑ 今現在の考察

紅い眼鏡とは…
今回、レビューを書くため何十年ぶりに鑑賞した。

「紅い眼鏡」が好きだったあの初々しい幼少期の自分を見てるような(対峙)感覚になった。まさに自分の青春の終わりを見た感じに陥った(あの頃は良かったよなぁ的な感じ)。それは映画と同じセピア色したノスタルジーだった。「紅い眼鏡」はそんな青春の1ページの華やかな宝物的な感覚を思い出させてくれた作品になった。

そう「紅い眼鏡」とは鑑賞者がノスタルジーを感じる作品なのかもしれない。

人は考察をしたがる。
何らかの理由を付けたがる。
本来映画という作品は、
己の中の表現方法に過ぎない。
いや違うなぁ…
もっとシンプルで有るはずだ。
言葉が見つからない…

見ていてワイワイガヤガヤ作ってるなぁ〜
楽しいなぁ〜
面白いなぁ〜
制作側…
いや違うなぁ…
カメラのフィルムに焼き付けている…
いや違うもっとシンプルに…

その時の一瞬が消えてしまわないように残している、記念写真のような物何だと思う…

本来の使い方はそうだったはず…

最古の映画でも、
オーギュスト・リュミエールとルイ・リュミエール(リュミエール兄弟)の「工場の出口」「列車の到着」の“記録映像”だった…

トーマス・エジソンの「演説」の“記録映像”だった…

それが商業的になりすぎた挙句の果てが今の現状だ…

押井守監督も初々しい時代の初実写監督映画作品であり、声優の千葉繁のプロモーション・ビデオを作る話で始まった。16mmフィルムで500万円規模の作品としてスタートしたが、最終35mmフィルムで1000万円規模撮影にまで膨らんだ。出演者は「うる星やつら」の声優やスタッフも脚本家もアニメ業界関係者が参加して賑やかに作られた。それは自主映画のアットホームな感じで作られたに違い無い。楽しさが伝わってくる。正にそれが作品から滲み出ている。

押井守監督にとって「紅い眼鏡」は青春の1ページの作品。

押井守監督は、
あの日の、
あの時の、
あの時間と、
あの空間と、
あの瞬間を、
フィルムに残したかっただけではないだろうか…

今回の鑑賞で初めてそう思えた…




1995年夏…

人々は溶けかかったアスファルトにおのが “足跡を刻印” しつつ歩いていた…

酷く暑い日だった…


①鑑賞年齢10代
②心に余裕鑑賞あり
③思い出補正なし
④記憶明確
黄推しバナナ

黄推しバナナ