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紅い眼鏡のHKのレビュー・感想・評価

紅い眼鏡(1987年製作の映画)
3.6
「うる星やつら Beautiful Dreamer」「攻殻機動隊」などの押井守による初めての実写映画。ケルベロスサーガの一作品。キャストは千葉繁、鷲尾真知子、田中秀幸、源田哲章など

架空の日本で、首都圏の対凶悪犯罪の為に編成された特捜班に勤めていた都々目紅一。彼は行き過ぎた武装により解体されてしまう上の判断に抗い、残りの二人の隊員とともにテロを起こし、国外逃亡に成功する。そして、3年後、無事に日本に帰還したのだが、そこにはかつての日本はなかった。

映画が始まってからのカラーでの撮影シーン、そこでの銃撃戦からヘリに乗って川井憲次の音楽が流れてタイトルがドーンとでるシークエンスは最高にかっこいい。プロテクトギアもATっぽい重厚感と中2病をくすぐるようなデザインのためそこも含めてとてもクールでありながらバタ臭くてかっこいいのだ。

ただ、その後が面白いかどうかというと、意外と思しろいのだが、期待値を超えることはない。アニメ映画に実写的な映像で語るアプローチとリアリティーを取り入れた押井アニメ映画とは対照的に、実写映画では、敢えてアニメ的な演出を演者にやらせるという斬新なアプローチをやっている。

これが、ある種衒学的で博識ぶった押井守の厨2病のような、いうなれば客を選ぶような押井節やら押井ワールドに、新参者の方でも見入れるようなスパイスになっていはいるんです。ですけど、それがシュールで安直にも見えてしまうんですよね。そこが押井ワールドを期待していたファン層も失望させてしまったような気もしなくもない。こんなもんだったのかと。

それでも、しっかりとビューティフルドリーマーでも取り入れていたメタ構造も終盤に出していったり、やっぱり夢というものを使って現実と虚構というものを見事に扱っているというのがとてもいいのではないかと。後のアヴァロンでも使われるような少女の役割って、これはその夢と夢を行き来する橋渡し的な役割だと思った方が良いのかな?それとも構造的な映画の中で唯一の例外的存在というものとして捉えたほうがいいのか。モノクロからカラーに変わっていくシークエンスはアヴァロンでも見られたし、終盤は完全にループということでBDやってますからね。

あの紅い眼鏡は結局なんだったのか本当に気になる。眼鏡ってなんだろうね。あれをかけて物を見ると一体どうなるのか。眼鏡をかけて現実世界の彩ある世界に戻ることを示唆しているのか?考察しようにもどうしようにもやはり分からない部分がある。

それでも、押井守だからこそ引き込まれてしまうのだから仕方ない。なんだかんだ言ったってプロテクトギアがかっこいいのだからそれだけでも見れてしまうのだ。やはり映画を観れて良かったと思います。
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