あまのかぐや

HUNGER ハンガーのあまのかぐやのレビュー・感想・評価

HUNGER ハンガー(2008年製作の映画)
4.0
マーティン・スコセッシ監督とディカプリオの相性について「シャッターアイランド」で語りましたが、もう一人、俳優をとても活かして撮る監督。俳優と監督の絶妙な化学反応といえばマイケル・ファスベンダーとスティーブ・マックイーン監督を思い出します。

このひとたちのコンビも、ディカプとスコ監督同様、3作品観ました。

製作された順番は
ハンガー → シェイム → 12 Yaers a slave

その順番通り、
ハンガー < シェイム < 12 Yaers a slave

この順番で、みせる対象はより広く普遍へと広がっていっているような気がします。共感の範囲が広がっていく。

単にわたしの勉強不足なんですが、IRAとハンガーストライキについて、この刑務所に至るまでの政治云々はぼんやりとしかわからぬまま、気付けばずっぽりと踏み込んでしまいました。背景を知ったうえで見ると、また感想も違うのでしょうね。

けど、もともと共感からの感動なんか、この映画の肝ではない。

ただそこにある素材を、開腹手術のように生々しく見せて、その強さと美しさ(語彙が貧弱で申し訳ないけど、それしか言えない)を荒々しく映している。

それでもやっぱり、わたしの感覚として、この監督の撮る、醜と美を見せる映像は純粋にひきつけられるし、好きだ思いました。

主演のファスベンダーは、あんな環境(あの独房の壁・・・!監房の床!)で、常に素顔が分からんほどの壮絶な傷だらけで、身体なんか、あれどうなってんだ?それであるにも関わらず、その顔には若さと美しさと強さが漲っている。

「シェイム」「12Years〜」でも独特の、息が詰まるような長回しが見られたけど、特にこの作品での 面会室でのボビーと神父の対話シーン、この長回しは執拗に長回しすぎて、堪らない人は堪らないだろう。

ずーっと定点からのカメラで2人の対話を映している。とても映画とは思えない。なにかドキュメンタリーかインタビュ、取材映像でもみているよう。そのぶん、その場にいるような臨場感があり、こちらも息を詰めないではいられない。

あと、これは劇場観賞してあの音響の中で思ったのですが。
「静」と「騒」がものすごく精神的にキます。 一番辛かったのはハンガーストライキに入って何日ぐらいなんだろう、横たわるボビー・サンズが、体内から壊れていく音。
ほんとに痛い。いや、単に痛いという感じではなく。人が壊れる瞬間に自分の体内でも何か壊れたような・・・本気で失神しそうでした。

このボビー・サンズの役から、どうやってファスベンダーは素へと戻っていったのか。マックイーン監督は、あまり撮影に日数をかけないと言っていましたが(俳優のためにも)。とても気になる。
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