かえで

I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIEのかえでのレビュー・感想・評価

2.9
物心ついた時からピーナッツのアニメと漫画で育った私にとっては、どうしても不満が残ってしまう作品。本来どちらかといえば子供より大人の方が楽しめるような作品であるのに、全てにおいて中途半端であるがゆえにその良さが無くなってしまっていてとても残念でした。

他校の生徒であるはずのペパーミントパティやマーシー、フランクリン達がなぜチャーリーブラウンと同じ学校に居るのか分からないし、学年の違うサリーやライナスなどが同じ教室にいるのも謎でした。内容を2時間弱におさめつつ主要キャラクターを登場させるためには仕方がなかったのだろうけど、どうしても違和感が残ります。原作ではほぼ幻影のように、シルエットでしか登場しなかった赤毛の女の子の顔があっさり出てきてしまうのもやっぱり抵抗が…。
また、スヌーピーの恋人として登場するフィフィは、原作ではスヌーピーが一時期入団していたサーカスにいたプードルのうちの1匹で、駆け落ちするものの結局彼女だけサーカスに帰ってしまう…というようなエピソードがあるのですが、設定も見た目も全く異なるため、中途半端に名前だけ踏襲するくらいなら別のキャラクターにして欲しかったです。
スヌーピーの性格についても、世間一般のスヌーピーのイメージをそのままはめ込んだような印象を受けました。本来スヌーピーはあんな風にチャーリーブラウンに寄り添う犬ではありません。チャーリーブラウンが悉く失敗を繰り返す隣で知らんぷりして鼻歌を歌いながら美味しいところを全部持っていくようなキャラクターです。その憎たらしさとカリスマ性の絶妙なバランスこそがスヌーピーというキャラクターの良さであり、本作のスヌーピー像は良い子すぎてもはや別人(犬?)のようでした。

ストーリーについても、ピーナッツのお馴染みネタを無理やり詰め込んだような印象を受けてしまいました。例えばお馴染みのフットボールのシーンも最後に取ってつけたかのように出てきましたが、あれは作中で何度も繰り返されるからこそお約束となって面白いのであり、初めて観る方にとってはよく意味の分からない場面になってしまったのではないでしょうか。これなら、短編集の方がよっぽど良いです。

ただ可愛いわけじゃない、もっとシュールで、ドライで、哲学的で、可笑しくて。そんな魅力のピーナッツが大好きだからこそ、本作での改変をとても残念に思ってしまいました。
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