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一条さゆり 濡れた欲情のDaiOnojimaのレビュー・感想・評価

一条さゆり 濡れた欲情(1972年製作の映画)
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 実在のベテラン・ストリッパー一条さゆりが実名で出演した初期ロマンポルノの大傑作。今まで何度となく見たが、何回見てもいい作品です。

 一条さゆりの名を冠した作品だが、実質的な主役は、その跡目を狙い対抗意識を燃やす若い野心家のストリッパーの伊佐山ひろ子。だいたい神代辰巳監督作品では、男は情けなくてウジウジしてパッとしないが(この作品でも男はみなストリッパーのヒモ)、女がしたたかでしぶとくて強くて、そして可愛くて魅力的である。それは監督自身の実感的人生観なのだろう。ここでも、当時まだ20歳の伊佐山ひろ子がたとえようもなく魅力的だ。伊佐山ひろ子は芹明香と並び、初期ロマンポルノを代表する女優だと思う(宮下順子様は別格)。そして神代作品の良さはその明るさとユーモア(「青春の蹉跌」や「赫い髪の女」みたいな暗い傑作もあるが)。この作品も明るく猥雑でエネルギーに満ちて開けっぴろげな人生賛歌だ。

 そして神代監督は、音楽(というか「歌」)の扱いが抜群にうまい監督でもある。「青春の蹉跌」の「エンヤートット」もそうだが、この映画を見た人なら誰でも「ナカナカナンケ、ナカナンケ〜」という呪文みたいな春歌?のフレーズがつい口をついて出てしまうだろう。

 神代監督らしさが全開で、しかも女性達も魅力的。ロマンポルノと言ってもAVとは全然違う。味わい深い大阪庶民の人生劇場をぜひ。(2021/1/20記)
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