三樹夫

屋根裏の散歩者の三樹夫のレビュー・感想・評価

屋根裏の散歩者(1992年製作の映画)
3.5
厭人癖の男の唯一の世間と接する方法が犯罪(オーケンのエッセイより引用)という悲しいんだかイカレてんだか常人には理解しがたい乱歩ワールド。
三上博史の主人公はそんな乱歩キャラの典型で、世間に完全に飽きているが屋根裏から覗いて見る世界だけは魅力的、なおかつ唯一の彼の世間との接点でもある。覗きをしなければというか犯罪を通さなければ世間と接することができない。覗き穴からでないと世間を見れないという変態。覗き穴から見える世界というのは、まあ倒錯した世界で変態。ちなみに原作ではこの映画ほど隣人たちが自室で痴態を演じているわけではない。
後、彼は犯罪嗜好癖で犯罪というものに対して異常に憧れがある?犯罪の中でも殺人と完全犯罪は彼にとっての最上であり、それを実行可能の見通しが立ったからこそ毒殺を実行した。

この映画ではこれぞという実相寺アングルはあまり多くなく実相寺度は低め。乱歩の倒錯した世界と実相寺昭雄の演出は相性が良い。粘っこいエロシズムと観ていると癖になる不安感、幻想感を抱かせる演出を発揮できる場として乱歩作品はうまく土台を固めている。
三樹夫

三樹夫