酢

屋根裏の散歩者の酢のレビュー・感想・評価

屋根裏の散歩者(1992年製作の映画)
3.0
実相寺昭雄の手にかかれば屋根裏は光と霧が満ち満ちる異世界に。この辺の映像センスは相変わらず素晴らしー。でもその他は実相寺的得意不得意がはっきり出ているようで……手放しでは褒められないような気持ちに。三上博史を蝕む退屈な日常への嫌悪感は撮れても、犯罪に手を染めていく高揚感は形式的にしか撮れない。覗き趣味の恍惚は撮れても、館の住民たちの退廃した性生活はパロディ的にしか撮れない。原作からマシマシ増量のエロシーンは、実はそこまで興味が無かったんじゃないかと勘繰ってしまう。だってエロくないんだもん。
結局実相寺作品のテーマは「傍観者の悦びと哀しみ」に尽きるんだと思う。映像は素晴らしいし共感もできるけど、もう一歩踏み込んでくれないと「映画」として面白くなっていかないんじゃないかなあ?うーん、難儀……。
酢