むらむら

黒四角のむらむらのレビュー・感想・評価

黒四角(2012年製作の映画)
5.0
日本人監督が単身渡航して、中国北京で制作した作品で興味を引かれる。

レビューサイトには「タイムリープ恋愛映画」「隠れた名作」とありつつも、賛否両論なことに一抹の不安を覚えながら視聴。

俺の感想は「『隠れた名作』……うーん、隠れたままで、良かったんじゃないの?」というもの。

北京郊外にある芸術家村で暮らす売れない画家・チャオピン。彼はある日、「2001年宇宙の旅」のモノリスのような黒く四角い物体が浮遊するのを目撃。追いかけていくと、モノリスから全裸の男が出現してウロウロし始める。男は記憶を失っているものの、チャオピンの妹と、以前どこかで会ったことがあると呟く……。

上記の紹介だけ読むとミステリーにもSFにも行きそうな設定なんだけど、完全に雰囲気映画。

同様の条件で、日本人監督がインドネシアにて撮影した「海を駆ける」を思い出した。あの作品も、記憶喪失のディーン・フジオカが、インドネシアの海辺をウロウロするだけ、という、雰囲気映画だった。


日本人が海外で映画を撮るときに、とりあえず記憶喪失の人をウロウロさせる、「ねじ式」縛りみたいなのがあるんだろうか? なんとなく既視感のありまくる設定だった。

しかも、この作品、上映時間が2時間25分もある。

雰囲気映画で二時間半って、ロシアじゃあるまいし、長い、長過ぎる! 

あまりに長いので、最後のほうでは「この監督、撮ったまま、寝てんじゃね?」って疑惑を拭い去ることが出来なかった。インドなら十回くらいはダンス挟んでるレベル。

また、全裸出現とか、途中で挿入される「両思いになったら存在が消えてしまう」って設定とか、監督が撮りたいテーマを撮るがために、無理やり入れたようにしか感じなかった。

特に全裸での出現。

チャオピンに、モノリスからの出現を目撃されてたから良かったものの、発見されてなかったら、完全に不審者。

通報されて、人民軍に一瞬でウイグルの再教育キャンプにブチ込まれるよ?

つか、たとえ芸術家でも、全裸の男を、はいそうですか、と、家で養ったりしないって。あんた、自分で貧乏いってたやん。

そんなんだったら「着るものと記憶、一切合切あわせてメルカリで売っ払ったから全裸の記憶喪失で登場した」、くらい吹っ切れた説明にしてほしかった俺である。たぶん全く別の作品になるけど。

というわけで、雰囲気映画を観ると、すぐに睡眠装置が作動する俺には合わない作品だったが、北京の風景自体は素晴らしい。レトロ廃墟みたいなシーンがいっぱい出てきます。

なので、この作品を観る方は、無理に筋を追わず(これを「無理筋」と言います……嘘)、レトロモダンな映像と、チャオピンの妹の美貌を堪能する、と割り切ったほうが良いと思います!


つーか、全裸でモノリスから登場するのが、チャオピンの妹と主人公の美人恋人だったら、こんなにブツブツ不満を言わないのに! 

全裸で街を歩くのはシュワちゃんだけで十分です! !(魂の叫び)
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