MasaichiYaguchi

ターニング・タイド 希望の海のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.3
「最強のふたり」のフランソワ・クリュゼがイメージを変え、ヨットレースの最高峰「ヴァンデ・グローブ」に挑むヨットマンを演じた作品。
数ヶ月をかけて単独無寄港で世界一周するヨットレースでは、荒れた海や、それによって船が故障したりと、様々なアクシデントが競技者を襲う。
原題「En solitaire」(一人トランプ)が表すように、どんな困難に見舞われようと、孤独であることの寂寥感に苛まれようと、これらを一人で克服しなければならない。
主人公ヤンは、出場予定者が怪我で欠場となり、ピンチヒッターとして世界一周のヨットレースに挑む。
最初は快調に航海していた彼だが、思わぬアクシデントでカナリア諸島沖に停泊して、船の修理をする羽目になる。
その上、「招かねざる客」が乗船していることが判明し、彼は頭を抱え込むことになる。
レースは「単独」であることが条件なので、「同乗者」がいることが分かった時点で失格となってしまう。
彼のヨットに密かに乗り込んだ16歳のモーリタニア人の少年マノが、何故このようなことをしたのか、ストーリーが展開していく中で分かってくる。
この闖入者のマノを大海原に放り出す訳にもいかないヤンは、陸地の近くで下船させようとするのだが…
海は穏やかな時ばかりだけではなく、大荒れになる時もある。
嵐のシーンでは激しく揺れ、ザラついた荒れた映像になるので、観ている我々も船酔いしそうになる。
このような過酷な状況を長期間、「お荷物」まで抱えて奮闘するヤンは、海での百戦錬磨の経験で、これらのハンディキャップを物ともせず、他の競技者達との遅れを挽回して順位を上げていく。
果たして彼は世界一周を成し遂げられるのか、そして優勝の行方は?
人は一人では生きていけない。
強靭な精神を持つヤンでさえ、衛星通信で家族と嬉しそうに話す姿を見ていると、改めてそう思う。
そして「厄介者」に過ぎなかったマノとの間にも、やがて心の交流が芽生える。
本作は過酷なヨットレースを通して、人としての「真の勝利」とは如何なるものかを、最後の方で晴れやかに、そして温かく我々に提示している。