CHEBUNBUN

殺人ゲーム/コミックストリップヒーローのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

4.0
【ヒーローが死ぬわけないだろ!】
年末にディスクユニオンで衝動買いした作品。アントニオーニの『欲望』がパルムドールを獲った年にサイケデリックな作品が脚本賞を獲っていた。それが『コミック・ストリップ・ヒーロー』(旧タイトルは『殺人ゲーム』。

これがメチャクチャカッコよくって、つくづく買って正解でした。

漫画家の元に、熱狂的なファンが現れ、生活がメチャクチャにされるという、所謂謎の訪問者もの。

漫画の世界と自分の人生がリンクしていると考えるオタクは、漫画家に「スパイに狙われているから逃げろ!」と言ったり、「スイスの別荘に逃げろ!」と言ったりする。丁度アイデアに枯渇していたもんだから、その漫画家は彼に付き合う。

本作は、オタクと漫画家の空想と現実を行き来する冒険から、人が他者の話に惹き込まれることはどういうことなのかを洞察している。

オタクの話を、自分の漫画の世界に翻訳する、しかしオタクは自分の意のままにコントロールしようとする。その対立を虚構で繰り広げる。当時CGなんてないので、虚構を協調すべくマンガを差し込んだり、ドギツイ色のセットを映したりする工夫がされている。

挿話こそ、シュールでとっちらかっているのだが、それが愛らしく思える。曲もサイコーにクールで、ラストの台詞「ヒーローが死ぬわけないだろ!」を聞いた時、私の背筋に雷が落ちた。

傑作であった。
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