いろどり

消えた画 クメール・ルージュの真実のいろどりのレビュー・感想・評価

4.0
カンヌで「ある視点部門」グランプリだけどフィルマに載っていない様子。
ポル・ポト率いるクメールルージュに虐殺された人たちの埋まる水田の土と水を使い土人形に息を吹き込み、無念の思いで殺された人たちに寄り添った魂を感じる作品だった。これを見た後に「最初に父が殺された」を見たら、背景理解が深まった。

感情を押し殺したように淡々と語る監督の中から家族への思慕、亡くなった祖国の人たちへの愛、語り継ぐことへの使命感が伝わってくる。

土人形の作成風景を折り込むことで時々視点を現在に戻される。観客と一緒に監督も悲しい大虐殺を俯瞰する。フロイトの絵の前で監督の子供時代の土人形が出てくるところがあった。フロイトは、精神的トラウマを言語化することによって治療していた。監督は今もトラウマに苦しみながら、この作品を通して葛藤や苦しみの一つ一つを必死に整理して、向き合っているのだと感じる。時折、不鮮明な海が映るのも、過去の激しくも混濁した記憶の投影なのかもしれない。

北朝鮮の強制収容所を描いた「トゥルーノース」も人形で描写していて思ったことだけど、残虐な歴史を語るには、生々しくなりすぎずに語り継ぐことも大切かもしれない。
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