camuson

消えた画 クメール・ルージュの真実のcamusonのレビュー・感想・評価

4.4
70年代のカンボジア。
クメール・ルージュ(カンボジア共産党、ポル・ポト派)によってもたらされた悲劇を、
粘土をナイフで削りだした、素朴な風合いの土人形とジオラマで再現したものです。
過激な表現はあえて控えているようです。

主人公はまだ幼き日の作者。
平等の名の下に、私物をすべて取り上げられ、
自由を奪われ、食べ物を奪われ、
家族すべてを、餓死または衰弱死で失ってしまう様子が描かれます。

食べ物がないわけではないのですが、
ある女が飢餓感から、無断で食べ物を拾って食べてしまうと、
我が子に密告されて処刑されてしまいます。
(子供たちは競って密告したようですよ)

クメール・ルージュが撮影した宣伝映像が流され、
表裏が対比されます。
いつも扇子を持って、笑顔を絶やさず拍手しながら登場する
小肥りなおっさん(ポル・ポト)の、屈託のなさが怖いです。

――――――――――――――――――――――――

背景に目を向けると、
ベトナム戦争で思い通りに事が運ばないアメリカが、
南ベトナムへの物資輸送ルート(ホーチミンルート)を絶つために、
カンボジアを空爆したのが裏目に出て、
原始共産主義のクメール・ルージュを増長させてしまったと考えられます。

アメリカのメチャクチャはいつものことですが、
現地の人からすれば、空爆で爆殺されるわ、
クメール・ルージュ(自国民)に餓死させられるわ、虐殺されるわ、
まさに踏んだり蹴ったりなんですよね。
camuson

camuson