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バンクーバーの朝日のmのレビュー・感想・評価

バンクーバーの朝日(2014年製作の映画)
4.2
序盤のちょっと暗いトーンで間延びした雰囲気は、野球好きにとってのシーズンオフそのものですね。開幕前夜にレジーがウキウキでユニに袖を通すところからテンポが上がっていきます。

そののちレジーが編み出したプレースタイルに、私はワクワクしました。
「デカくてパワーのある白人相手に勝つためには頭を使わなきゃ」というのは今の日本野球では当たり前ですが、当時それを思いついたのは画期的だったのではと思います。

妻夫木くんを始めとする選手役の役者さんたちのプレー中の表情がとても良かったです。目がキラキラしてて。

また、選手以外の登場人物も多いですが、序盤ではみんな疲れた顔をしてるのに、朝日が快進撃を見守るうちに明るい表情になっていきます。こういうのが「野球の力」だよなあと思いました。日常ではつらいことばかりでも、野球に元気づけられるんですね。

「あんな弱いチーム」と言ってても勝利が続けばウキウキになるおじさん、いつもは呑んだくれてるのに朝日が好調だとゴキゲンで早く帰ってるお父さん、「野球なんて」とバカにしていたのに一生懸命な選手たちを見て笑顔になる女性たち、「朝日の野球すげえなあ」と素直に褒めたり、審判に「フェアにやれ」とやじを飛ばしたりするカナダ人たち…。
球場の観客席で戦況を見つめて、あるいはラジオの実況中継に耳を傾けて、一喜一憂する野球ファンの姿は今とほとんど変わらない。
「野球の力」は民族も時代も超えるんですね。

もちろんこの映画では時代背景や朝日の末路も描かれています。でも見終わったあと一番言いたくなった言葉は劇中のレジーのセリフと同じです。
「やっぱり野球は楽しいよ」
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