くりふ

不良姐御伝 猪の鹿お蝶のくりふのレビュー・感想・評価

不良姐御伝 猪の鹿お蝶(1973年製作の映画)
3.5
【雪で乳房の血を拭う】

U-NEXTにて。はるか昔、東映ピンキーバイオレンスを集中して見ていた頃、カナリ好きな一本だったが…今ではサスガに、物語的にはスットコで、楽しめるところはあまりない。

池玲子さんの肉厚肢体にむほーと溺れ、クリスチナ・リンドバーグの珍味な肉感を脇見して、でも、その迫力で充分な一本かなと。

いま見ると痛々しくもあるが、“全裸チャンバラ”はちょっとない、名珍場面だ。玲子殺陣は目を瞑っちゃうし、スローモーションだからこそ見られるレベルだと思うが、男の欲望視線を満たしつついわば、集団レイプをカタナひとつで単身、撃退する展開になっている。居心地悪いがスゴイ見せ場だと思う。

『キル・ビル』への影響は明らかだけど、全裸チャンバラNGのユマ・サーマンでは行けない場所に、池玲子さんは至っている。それこそ、映画史でコレを実現させた女優さんって、どれくらい居るんだろう?

“全裸チャンバラ”の実績が光るから、男どもの中へ切り込むクライマックスも、“雪で乳房の血を拭う”ラストも活きてくるのではと。…物語とは別のところで、ヒロインの“生かされ様”として。

物語の方は、1973年公開に向け明治38年の設定とした意図はよくわからないが、日比谷焼打事件など起こったきな臭い世相が、あさま山荘事件翌年という当時に嵌ったものだろうか?

あと、同年公開の『修羅雪姫』と妙に似ているのが、気にはなる。

池玲子さん、正面からのご尊顔はやっぱり、ミス・ピギーだったけれど、雑多なイロイロを呑み込んでしまうその身体、その“器力”にやっぱり感心したし、本作の要だと思いました。

<2024.4.29記>
くりふ

くりふ