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青い体験 誘惑の少女セシルのmimagordonのレビュー・感想・評価

4.2
「愛を知る全ての人に捧ぐ」

失った愛の痛みは、どうやって癒せるのだろう?通じ合えない愛のもどかしさはどう乗り越えられるのだろう?港町シェルブール、経済危機での失業が相次ぎ世情もピリピリしている。そんな折ふと街に戻ってきたセシル。登場シーンからミステリアスだし、彼女の性的な魅力と奔放さはエロスの権化のような煌めきに満ちている。まるで本当の暗闇を消すかのように。複数の登場人物が現れ、それぞれの物語が繋がっていくうちに、セシルが単なる奔放な女性ではないのが見えてくる。女性トイレで話す人たちのシスターフッド的な空間、青みがかったモノトーンと下半身。少しずつビビッドになりカメラも上半身を写し始める。この色彩の対比は性の抑制と解放の暗喩でもある。愛と性を切り離すのは簡単だ。でもそれでは一部が欠けたまま。欲に身を任すのでも蓋をするのでもなく、自分が抱える心の呪縛が解けた時に、その色がリアルな暖かさを帯びていく。切なくも開放的なラストに涙腺が緩んでしまった。

ちなみに、邦題はかなりのミスリードなので要注意。本家『青い体験』とはストーリーの核においても異なるし、そもそもセシル含め「少女」は出てこない。大人の愛の物語なのはここに書いておきたい。
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