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砂漠の流れ者のefnのレビュー・感想・評価

砂漠の流れ者(1970年製作の映画)
3.8
 昼下りの決闘がランドルフスコットの同窓会でジュニアボナーがロデオの哀歌なら、これは駅馬車の葬送。賛美歌は娼婦が投げた食器で中断し、司祭は人妻に手を出しジャンプカットで逃げ惑う。駅馬車でさえ「休憩」を必要としない自動車に追い払われつつある。(メソジストが批判しているのが酒ではなく発明なのも面白い)西部劇の古き良き慣習、風景は喪われジョンウェインに居場所はない。
 だからといって開拓時代すべてを否定するわけではない。メソジストの変化は禁酒法を予言するものだし、そこにはギャングが、フィルムノワールの時代が控えている。これには西部劇の終焉と時代の変遷を見事に反映されている。
 また、ペキンパーというとワイルドバンチや戦争のはらわたが人気で暴力の作家として扱われることが多い。しかし、最後の西部劇監督とも呼ばれているように、根幹にあるのは西部劇への愛だ。昼下りの決闘、ワイルドバンチ、ジュニアボナー、いずれもジョンフォードの風景が投影され、ホークスのようなウィットが作品を動かしている。映画は銃を向け合っての切り返しや砲弾のトリプルカットだけで生まれるわけではない。風景にも起源があるのだ。
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