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砂漠の流れ者の一人旅のレビュー・感想・評価

砂漠の流れ者(1970年製作の映画)
5.0
サム・ペキンパー監督作。

『ワイルドバンチ』(1969)、『わらの犬』(1971)、『ガルシアの首』(1974)、『戦争のはらわた』(1977)のバイオレンス映画の巨匠:サム・ペキンパーが1970年に撮り上げた異色の西部劇で、名優:ジェイソン・ロバーズが砂漠で暮らす男を妙演します。

西部開拓時代末期、仲間に裏切られ砂漠の真ん中に置き去りにされた男:ケーブル・ホーグは、数日間砂漠を彷徨う内に奇跡的に水源を発見、その土地を安価で購入したケーブルはそこに小屋を建て、通りすがる駅馬車の乗客を相手に水の販売で生計を立てつつ、自分を陥れた嘗ての仲間に復讐する日を待ちわびていた…という異色のシチュエーションのもと展開される西部劇で、砂漠の真ん中に停留して水の王国を築いた主人公の風変わりな日常と復讐のゆくえを、彼が町で出逢った娼婦のヒロイン:ヒルディーとのロマンスや欲望丸出しなエセ牧師との交流と友情を軸にユーモラスに綴っています。

スローモーションでの銃撃シーンに代表される苛烈なバイオレンス描写を十八番とするサム・ペキンパーが、持ち味であるバイオレンスを封印し、砂漠に生きる初老の男の生き様を詩情豊かに映し出した作品で、移動手段が馬から自動車に移り変わる過渡期にあった時代において、開拓者&ガンマンが主役であった旧い時代に取り残された男の人生の“最後の輝き”と時代の終焉をユーモアと哀愁を混在させた空気感覚の中に謳い上げた傑作西部劇であります。いつものスローモーションでのバイオレンスとは真逆で、クイックモーションを多用したコミカルな喜劇演出が一級の愉しさです。

主演のジェイソン・ロバーズが砂漠に活路を見出す男をコメディタッチに妙演していますし、相手役の娼婦を演じたステラ・スティーヴンスのコケティッシュな好演も光ります。
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