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ミッシング・ポイントのtheocatsのレビュー・感想・評価

ミッシング・ポイント(2012年製作の映画)
3.9
米国を愛したのに嫌われたイスラム青年の話

パキスタン名門の出だが苦労して米国留学し優秀な成績で卒業。企業エリートとして順風満帆だった青年が2001.9.11米国テロ後に状況が一変。テロ後にイスラム的ひげを生やした事も相俟って不当逮捕など差別にさらされる。それでも職場上司は優秀な彼を擁護し上級職へ登用、依然と変わりなく重要な仕事も任されるが、トルコのある出版社立て直しのために社長を解雇する役目を負わされる。しかし、もはや企業の利益のために他人の人生をばっさり切り捨てることはできなくなっていた・・・

上の物語と並行してパキスタンの大学勤務アメリカ人の誘拐事件とその救出劇、青年のパキスタン帰国後の大学講師職やイスラム過激派幹部との接触、などが頻繁に場面を入れ替えながら差し挟まれる。



総体的な視聴感としては内容充実でかなり見応えあり。
米国での不当な扱い後、イスラム青年の心境の変遷は過不足なく描かれていたという印象。
潜入スパイを助け出すための米国CIAの傲慢・狡猾な捜査手法も同様。
その他のサイドストーリーにも私は瑕疵点を見出すことはできなかった。

自身の情緒的反応としてはなぜ9.11後にイスラム風のひげ面にしたのかという青年に対するイラつきがあるが、それよりも芸術家気取りのヒロインの欺瞞的態度にはむかっ腹が立って仕方なかった。
あの個展はどう考えてもイスラム青年に対する悪意ある皮肉かあてこすりでしかなく、当然腹を立てる青年に対し涙を流しながら言い訳をする時の女の醜さは特筆すべき場面。
後、結婚し家庭を持ちたがっている青年の意志をはぐらかそうと、以前の恋人の話を持ち出す場面も不誠実な言い訳にしか見えないなど実に不愉快なキャラクターでしたね。
※もしかしたらそんな風に視聴者に印象付けようとあの女優を選び、そのような演出をしたのかもしれない。
※※容貌的に一見すると美人とかチャーミングという感じはしないが、イスラム的観点からするとちょっと小太り気味の方が魅力的とされる文化的背景があるのかもしれない。



視聴中気になっていたのはこの作品はどの立場で作られたものなのか?ということ、英語劇なのでパキスタン側ではないことは明らか、しかし映画の流れ的には米国万歳でもなく、視聴後に調べたら米国英国カタール(!!)合作のインド人女性監督による作品と知り大いに驚く。
出身地的にイスラム教ではないようだが(勿論推測に過ぎない)、イスラム側の分化や心理も肌感覚的によく理解できていたのだろうと思われる。

総評は3.9の四つ星


付記:9.11ビル航空機突っ込み後の倒壊場面を見れば、あらかじめ爆弾を仕込んでいおいた制御破壊と酷似しているのは建築に携わっている人間なら感じ取ることが出来ただろう。
陰謀論的な「9.11内部犯行説」も頷ける部分がないわけではないので、疑問を抱いているような人は関連情報を漁り、当時の動画を見直してみるといいかもしれない。

012011
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