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聖杯たちの騎士のyumaのレビュー・感想・評価

聖杯たちの騎士(2015年製作の映画)
3.1
 改)高尚な説法のような語りかけと極めて世俗的な場面。寡黙な男と感情を爆発させる女たち。大きな展開のないストーリーと絶えず揺れ動く画面。
好みならいざ知らず、その評価ですらかつてこれ程分かれる監督がいただろうか。(蓮實重彦の言いようは凄まじかったが…)有難迷惑なことにマリックの映画はその冒頭と結語の語りで全体の大筋を表している。つまり今回は騎士がエジプトで真珠を探しに行ったまま深く眠ってしまった話だ。映画は8つの章があり内7つ(最終章に当たる「自由」以外)はタロットカードの名が付けられている。タイトル「聖杯たちの騎士」もタロットカードの名であり、これは冒頭で語られる聖杯伝説と掛けられている。 淡々と語られる音声と、揺れ動く映像が続く中、眠る者、怒る者、感動する者、それは演者も我々鑑賞者も様々だ。しかし恐らくマリックも馬鹿丁寧に説明する気など全くない。マリックが「自由」に作品を作り、鑑賞者にも己の責務に対する「自由」を分け与えているのだ。
 個人的には映画館で過ごした時間は贅沢なものであった。好みではないが間違いなく美しい映像は自宅ではなく映画館向きだからだ。ナタリーポートマンはイマイチだったが、ケイト・ブランシェットは良かった。そしてイモージェン・プーツは役柄とドンピシャにハマり輝いていた。駄作が蔓延る昨今の映画界では、少なくとも何が良い映像であるかを知っている監督というだけで見る価値があると言っていいだろう。
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