K

トラックのKのレビュー・感想・評価

トラック(1977年製作の映画)
4.8
パリの郊外で老女がヒッチハイクしたトラックの運転手に向かって語るという脚本を、監督のマルグリット・デュラスが役者のジェラール・ドパルデューに語る。

老女も運転手も映されず、トラックの車窓からの映像のみが流される。トラックの走行する街には人の姿も無い。老女は海を指しながら「見て、世界の終わりよ」と言うが、画面に海は映されない。

“不在”がひとつのテーマであるようだ。

老女は”階級から脱落した女”ということだけが監督から説明される。「世界は滅びてゆけばいい、それが唯一の政治」と言う。

政治活動をしていた彼女は、労働者階級に希望を見出していたが、ある時、支配階級と労働者階級が共謀していることに気付く。両者の不安は同じ、目指す所も同じ、やり方も同じ。

どちらも自由への革命を先に伸ばし続けてる。それでいながら、自分の中で他者を暗殺している。自己矛盾という自分を不在のものにしている。

相反して見えるものが実は共存しているという両義性を、反復される映像や言葉で強調していく。

すべてを愛することもできるし、愛さないこともできる。
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