謎の絵本作家ヘンリー・ダーガーの実像を追っている、ドキュメンタリー作品。股間にペニスをもつ少女たちが、大人を相手に血みどろの闘いを繰り広げるという、異様な世界観を追求していく。
不遇の人生により、社交性が欠乏してしまい、空想力が異常発達した孤独な老人の物語。ヘンリーはどのような状況に置かれても、その場での体験を創作のための一素材に脳内変換させてしまう。これは、すべての芸術家に共通する普遍的なもの。
元来、ヘンリーの作品は、他作品からのカット＆コラージュ、トレース等を駆使して、自分の空想世界を自分自身のために具現化させたものに過ぎない。まったく「個人的な作品」であり、人に見せるために製作されたものではない。
敬虔なキリスト教徒のヘンリーが、「神は人を救ってくれるのか？」という疑念に辿りつく展開が興味深い。人間の心を揺り動かす「奇想」は、往々にして宗教家の頭の中から生み出されるモノだということを、あらためて痛感させられる。
