ポルりん

黒子のバスケ ウインターカップ総集編 影と光のポルりんのレビュー・感想・評価

2.4
「黒子のバスケ」の総集編であり、誠凛vs桐皇学園をメインに描いた作品。

あらすじ

その初戦の相手は、インターハイ予選で大敗を喫した桐皇学園だった。


本作を鑑賞する前に「黒子のバスケ」の原作、アニメ共に全て見ていたのだが、「スラムダンク」程ではないにしろ結構楽しんで見る事が出来た。
特に2回目の誠凛vs桐皇学園が原作の中でも一番好きな話であり、アニメの方もクオリティが高く(特にゾーンの部分)毎週楽しみにしていたのを覚えている。

と言うのも、私は全然練習に参加せず、己の才能のみで常人を簡単に倒す性格が悪い天才を、積み重ねた努力やチームワークなどで倒す話が大好物なのである。
例を挙げるなら、「はじめの一歩」の鷹村守vsブライアン・ホークや「アイシールド21」の泥門デビルバッツvs神龍寺ナーガなどだ。
本作でメインに描かれている2回目の誠凛vs桐皇学園も比較的それに近い話なので、元々好きな話の部類であったが、それにプラスしてリベンジ戦や黒子にとっての天敵+元相棒といった要素や絶望感の演出が素晴らしかったので非常に楽しんで観る事が出来た。

基本的に2回目の誠凛vs桐皇学園は好きなのだが、

青峰「俺に勝てるのは俺だけだ!」

と言っている割には自分より強い奴が身近にいる事には今でも違和感を感じている。
多分、赤司と1on1したらひたすらひざまづくといった無様な姿をさらす事になっていたのではないか・・・。

あと、青峰はゾーンに入ってない状態で火神を圧倒していたのに互いにゾーンに入ったら互角になったのも少々納得できない。
ついでに、誠凛vs桐皇学園は初戦ではなく準決勝で当たって欲しかったかな(「アイシールド21」の泥門デビルバッツvs神龍寺ナーガも準決勝か決勝で当たって欲しかった)。
更に創立1年か2年の弱小チームが優勝する展開は大嫌いである(H2など)。

と、他にも多少の不満はあるものの、それをかき消すくらい2回目の誠凛vs桐皇学園は好きなので、かなり期待値を高くして鑑賞に臨んだ。

結果として一応楽しむ事は出来たのだが、1つの作品として考えると質の悪い作品だと感じた。

本作は誠凛vs桐皇学園の総集編となっているが、どうにも初見の人には不親切に作られているように見受けられる。

黄瀬が何で誠凛を応援してるのも分からないし、花宮が今吉に対して、

花宮「人の嫌がることをさせたら俺以上」

と言っているが、初見の人からしたら突然モブキャラが語り始めた様にしか見えないので、

お前誰だよ Σ(´□`;)

と、思うだろう。
ついでに花宮の性格の悪さを全然描いていない為、説得力が皆無だ。

また、キャラクターのバックストーリーがほとんど描かれていない為にキャラクターに共感しにくい。
唯一バックストーリーが描かれているのは敵側の青峰くらいのものだし、挿入されるのも後半と結構タイミングが悪い。
テレビアニメと同じように1回目の誠凛vs桐皇学園の前に描いた方がドラマ性が高くなるし、黒子と青峰の関係性もより明瞭化される。

これ以外にも色々と初見の人には不親切な部分が見受けられ、「黒子のバスケ」を観るなら総集編ではなくテレビアニメを観ろと言いたくなるくらい、まとめ方が酷い。

総集編は新規に一から作品を作り上げるよりも、ローコストかつ短時間で作れるので製作者側としては優しいのだが、初見の人には不親切になる場合が結構多い。
こんな映画ファンしか観ないよと言われた事があるが、少なからず本作の場合は作品のネームバリューは比較的高いので、当然ながら、全話見るのは面倒くさいから総集編で観ると言う人もいるはずだ。
と言うより、ネームバリューに関係なく劇場版での総集編の場合、製作者側としては優しい条件が揃っているのでファン向けだけではなく、寧ろ初見の人の為に製作すべきだと思う。

そういった意味で言うと、本作は初見に厳しく、ファンに優しいように作られているが、ファン向けと考えても不満に思う点が幾つもある。
そもそも、ファン目線で考えると総集編自体好ましくない場合が多い。
その上、時間配分的にどうしてもカットしなくてはならない部分が出てしまうので、ファンからしたら、

ファン「何故この部分をカットした!!」

と不満が出やすい。
現に私も木吉の怪我について描写していない為、黒子の

黒子「次じゃない、今勝つんだ!!」

や、火神の

火神「今やらなきゃ、いつやるんだよ!?」

などの台詞の意味がかなり弱くなってしまい、何故彼らがこの大会にここまで拘るかの理由が薄れてしまうので、木吉の怪我について描写しなかったのは不満が残ってしまう。

ついでにゾーン状態の火神と青峰の対決のBGMは個人的にはテレビアニメの方が好みである。

こんな感じで総集編は不満が出やすいので、新作カットを入れただけで満足するような人以外のファンを満足させる総集編は結構難易度が高いと思う。
だから、比較的ファンからは不満が出やすいので、劇場版で総集編をする場合はメインターゲットを初見の人にして、多少時間を長くしてでも物語を丁寧に描いた方が好感が持ちやすいのではないだろうか・・・。

その点では「機動戦士ガンダム」や「魔法少女まどか☆マギカ」は初見の人でも理解出来る様になっており、ファンも満足出来る作品となっているので、かなり良質な総集編だと思う。

もし、「黒子のバスケ」に興味があるのならば本作を鑑賞せずに、テレビアニメの方を鑑賞する事を強くオススメする。
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