ドント

超極道のドントのレビュー・感想・評価

超極道(2001年製作の映画)
4.2
2001年。大変によかった。こういう出会いがあるので映画はやめられない。警察とツルんでヤクザが牛耳る港町に、真っ黒いコートに身を包んだ男がふらりと現れる。ヤクザと対立する弱小愚連隊と知り合った男は、ゆらゆらと捉えどころのないまま動き出すのだが──
イーストウッド『荒野のストレンジャー』の、Vシネ版である。いや本当に。予告や題名からは想像もつかないけど。だいぶ感傷的に分かりやすくはなっているが、安易なパクリというわけではない。西部劇的な広さ深さが、Vシネ的な即物性と簡素さに趣を変え、ここに演出と映像の「遊び」が加わって、実に特異な作品となっている。
普通のヤクザVシネを期待した人はメッチャ面喰らうだろうが、こういうモノと考えを改めて観るとたまらなく面白い。まぁ「翔さん主演でこんなんいきなりやるなよ!」って気持ちはわかるけどホラ、黒沢清とか三池とかもいるし。
陽炎の立つ砂浜を哀川翔が歩いてくる冒頭から幽気が宿り、これは只者ではないなと確信させる。間違いなく日本のどこかでありながらどこでもないような場所が映し出される場面場面が、ぼやけていながらも鮮烈だ。そんな中で哀川翔の何もしない演技と、周囲の役者たちのクセのある演技が響き合う。
『荒野~』とは違い、男が単純な復讐者でないこと、迷いがあることがアクセントになっている。そこから生まれる眼帯娘とのやりとりは全てが痺れるほどに素晴らしい。欠損した者たちが生き残り(かじられたリンゴ)、そして男は消えるように去ってゆく筋書きが見事としか書きようがない。こういうのもアリなVシネの身軽さ、機動性が生かされた優れた怪作。数々の美しいショットが心に染みる。
ドント

ドント