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亡霊の檻
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『亡霊の檻』に投稿された感想・評価

Jeffrey

Jeffreyの感想・評価

5.0
「亡霊の檻」

〜最初に一言、独特で厭世的な気分に観客を陥れ、かつ音楽的で、近未来的なこの作品は人を選ぶ事は間違いないが、どこまでも不気味で恐ろしく、妙な時間枠が流れるおぞましい作品であった。ヴェンダースの傑作「ベルリン天使の詩」に出演していたニック・ケイヴの凄まじい演技が尚更恐怖を感じ、頃コロナ禍で行われたロックダウン状態を1つの刑務所と言う空間で作り出した気色の悪い宇宙映画である〜

本作は多数のビデオ・クリップを手がけジョン・ヒルコート監督の1988年のオーストラリアのサスペンス映画で、この度VHSを購入して初鑑賞したが秀作である。これがいまだにビデオのままだというのが残念だ。いまだにDVD化されておらず、海外版でも廃盤になっておりプレミアだ。本作は近未来の刑務所を舞台に、管理社会に潜むマニピュレーションの恐怖を描いたもので、観客を閉ざされた状況に陥れる内容で、実際に起こった事件を基にしており、90人の出演者のうち50人が実際に服役経験のある囚人たちで、囚人グローヴァーを演じているケヴィン・マッケイは14年間刑務所で過ごし、獄中から秘密裏に出版された彼の著作物は60年代アンダーグラウンドの古典となっているそうだ。この作品はオーストラリアを始め、ロンドン、パリ、ベルリンで上映され、不可視的操作の恐怖を観客に与えてきたとされている。

この作品劇中の中で見えないシステムによる「ロックダウン」が始まるのだが、頃中の影響でロックダウンと言う言葉が盛んに使われる現代において凄くタイムリーに感じた。ところで、脚本と出演と音楽を担当したニック・ケイヴと言えばヴェンダースの傑作「ベルリン天使の詩」に出演していた。彼は知的で国際的なロック界の伝説的人物として存在しており、脚本にも参加し、作品中では、驚くべき脇役メイナードを演じ、音楽も担当していた。その他にもほとんど知られてないと思うがブリクサ・バーゲルトの独創的で過激さで知られたバンド、アインシュテュルツェンデ・ノイバウンテンのメンバーとして有名な彼も出ていたし、ミック・ハーヴェイも音楽を担当していた。前置きはこの辺にして物語を説明していきたいと思う。


さて、物語は砂漠に立つ最新鋭の刑務所。刑務所内は一見パラダイスに見えた。部屋にはテレビがあり、所内ではドラック、タバコ、食べ物、刺青、男娼等のブラックマーケットがあった。そこは、社会の縮図とも言えた。しかし、刑務所内で法を気にする者など1人もいない。そこは、裁きを受けた後の安全な場所なのだ。新入りの囚人、ウェンジェルは一般囚ユニットに入れられた。このユニットでは、行動の自由が認められている。更生担当官のイエールは危険囚ユニットで働いている。ここの危険人物たちは行動が規制されている。囚人は1日に1度連れ出されて無理矢理1時間のレクリエーションをさせられる。残りの時間は官房に座り続け、本を読んだり、絵を書いたりしている。このユニットには知性がある。別の意味では危険とも言える。

そんな刑務所内で何かが操作され始める。一般囚ユニットでは武器、ドラックが没収され、危険囚ユニットではすべての私有物が没収された。日を追うごとに囚人たちの苛立ちが増し、看守の暴力や、囚人同士の陰湿なリンチや殺し合いが始まる。新しく放り込まれた精神異常者、メイナードは叫び続け、他の囚人を挑発する。刑務所内の緊張が頂点に達した10月25日、看守は囚人を殺害し、その看守を別の囚人が殺害した。看守は50回以上も胸を刺されていた。ロックダウンが発令され、刑務所内は当局の厳重な管理下に置かれた。自由な市民生活のためにも、当局への経済的、精神的支援が強く望まれる。この事件を調査した委員会は、当局への報告書でこう述べた。そしてさらに「より完璧な保安施設を...」と要求した…とがっつり説明するとこんな感じで、アップリンク配給で忘れ去られている作品である。

正直、性。厭世な気分になって、不気味であり気色の悪い作品である。物静かで淡々とモノローグが進められていくような感じ。相変わらずアップリンクのビデオって、字幕が横に付いて白文字だから背景と同化して本当に読みにくくて嫌になる。ニック・ケイブが檻の中にアボリジニ(黒人)が1匹いるぞ、ニガー、ニガーと連呼する気違い場面はすごい印象的だった。タンクトップの短髪だったからトム・ハンクス主演のキング原作の「グリーンマイル」に出てきたいかれた殺人鬼を演じたサム・ロックウェルを彷仏とさせる。作品中には90人の役柄があるが、そのうちわずか22人がプロの俳優で、50人は刑務所服役経験者である。中には19年間刑務所で暮らしていたものも出演しているそうだ。

この作品の画期的なところは、距離を置いて観客的なドキュメンタリー的手法をとっているところだ。距離を取ることで、観客は暴力的な知識から少し離れるようにしている。ハリウッドのスペクタクルなシステムより良いのは、ハリウッド的だと感情的に引き込まれていく事はないし、ぐっと掴まれるような感覚もないけど、この映画では2つの方法を交互に配置することで、人々を引き込もうとしていることに成功している。監督自身インタビューで、魅力的に描くと言うことを大事にしており、他の表現では、暴力の悪の方のインパクトを強くして描くこともできると語っていたし…。確か昔ジャック・ヘンリー・アボットと言うアメリカ人が描いたノンフィクション作品に影響受けたと監督は話していたが、その作者は殺人によって有罪判決を受け、人生の大半を刑務所で過ごした。

しかし、獄中でこの作品を発表し、その才能を評価されて仮出所を認められ、出所後、一般社会に作家として迎えられたものの、6週間後ニューヨークでウェイターを殺害してしまったと言うショッキングな話もある。それにしてもニック・ケイヴの自己破壊願望の強いメイナード役を見事に演じていたと思う。映画のために曲を書いたのもこれが初めてと彼はインタビューで答えていたが、「ベルリン天使の詩」の時は、ただ自分たちの持ち歌から2曲演奏していただけだったし、実際に場面場面に合った音を作るのは大変だっただろうな。ちなみにロックダウンについて少しばかり調べたのだが、1983年10月に米マリオン連邦刑務所でロックダウン状態に陥る事件が起こったそうだ。

監視2人がぶち殺されて、このロックダウンと呼ばれる、囚人を官房に閉じ込める処置のとられた理由が生み出されたそうだ。イリノイ州南部の野生動物保護区の端に位置する、アメリカで最も管理の厳しいこの刑務所は、63年に開設されたそうだ。当初から、近代的な刑務所のモデルとして作られたが、79年に最高に警備の厳しいレベル6の指定を受ける。このレベル6 は「ワンピース」のアニメにも出ていたと思う。それは、最も刑の重い囚人を意味するそうで、麻薬組織のボスだったり、大物専門のマリオンには、全米の半数以上の州から、問題の多い囚人が送られてきたそうだ。80年2月からロックダウンを実施するまでの2年8ヶ月の間に、囚人9人と看守2人が殺されている。

また、暴動が10件、深刻な暴力事件が57件そして職員に対する襲撃事件が33件起きているようだ。それがロックダウンに入ってからは、事件の数も極端に減ったと言う。ところが、マリオンのやり方には、批判もあるそうで、他の刑務所も徐々に管理体制を強めていると言う。刑務所内で看守殺しや暴動が起きた場合、州からは緊急事態資金が供給されると言う証言もあるようだ。元マリオンで看守を務めていたデビット・ヘイルは、当局は、囚人を独房に監禁する。そしてレクリエーション施設などをも取り上げ、彼らを全く何もない場所へと追いやってしまう。そしてそれが、暴動を引き起こすと語っている。現在マリオンには、看守が釣りをするための人工池や居酒屋が作られ、野球場が2つもあるとされているようだ。長々とレビューしたが、この作品は非常に実験的な映画の手法でとられているため、人を選ぶ作品である。特にストーリーを補完するモノローグがかなり画面に現れて非常に読むのが大変である。それとカットの繋ぎ合わせがデタラメすぎて笑えてしまう。
寂々兵

寂々兵の感想・評価

3.1
ジョン・ヒルコートの長編デビュー作で、近未来の刑務所を舞台にした暴動モノ…ということだが実態はディストピア色の強いダウナー系映画で、とりあえずニック・ケイヴは色気が凄い。実話ベースでドキュメンタリー・タッチなので悪霊ホラー風の邦題からは程遠い硬派な作品だが、まあ間違いなく一般受けしないのでDVD化なんて夢のまた夢だろうなあ。
断片的に綴られる囚人たちの日々がダウナーで詩的でやたらとカッコいい。全員の怒りと不安を暴発させる起爆剤的存在としてニック・ケイヴが出てくる。デビュー作からニック・ケイヴとともにやってんですねヒルコート監督。音楽もミック・ハーヴェイとブリクサとの3人。

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