大谷翔平が二刀流で活躍するはるか昔、アメリカにひとりの天才二刀流が居たことをご存知だろうか?
ベーブ・ルースかって?
いや違う彼の名は〝ロイ・ハブス〟調べても出てこない、その理由は後に記す。
多くの少年がそうであるように、彼もまた父親から野球を教わった。ただ一つ他の少年と決定的に違ったのは彼が本物の「THE NATURAL(天才)」だったことだ。
彼は自ら木を削りバットを作った。大抵の子は自分の名前を記すものだが、彼はそのバットに〝WANDER BOY(神童)〟と刻んだ。
プロになる前ローカルリーグでは、既に7度ノーヒッターを達成していた。
19歳の時、彼はシカゴへ向かう。野球の記録を全て塗り替えるため。
WANDER BOYの未来は約束されている様に思えた。あの不幸な事件が起こるまでは…
それから16年、選手の盛りの多くを彼はベッドの上で過ごし、もう投げられなくなっていた。野手としてメジャーにたどり着いた時、彼は既に35歳だった。
そして、そこから伝説は再び始まる…
『アシスタント』『フィクサー』などで知られるアメリカの小説家バーナード・マラマッドが作り出したキャラクターを当時48歳のロバート・レッドフォードが嬉々と演じる。
35歳で野球界に帰って来た本物のナチュラルが万年最下位チームで巻き起こす奇跡のベースボール・ファンタジー!
この話をご都合主義の典型的なハリウッド映画だと冷ややかに見る人もいる。
その意見は否定しない。
だが野球とは、そもそも〝男たちを子ども時代へ帰してくれる夢の遊び〟だ。
ご都合主義で大いに結構。
悪い奴は暗闇に潜み、いい奴には光が当てられる。照明と自然光を使った光と影が織りなす、笑えるくらいわかりやすい映像演出。ラストにスパークする漆黒の闇夜に輝く照明の花火‼︎
この映画をホメロスの『オデッセイア』の神話的構造を下敷きにしているという人がいる。また、ある人は『アーサー王伝説』に由来すると言った。
難しいことはわからない。
だが黄金色に輝く小麦畑や野原を渡る微風、そして夕方の淡い光の中、親子でのキャッチボールの美しさならわかる。
更にスクリーンの中には、若きグレン・クローズ、キム・ベイシンガー、バーバラ・ハーシーがいる。これ以上、何を望むというのだ。
かつて野球少年だった人、いや夢見る子どもだった全ての人に送る挫折と再生の物語。
1984年9月劇場にて鑑賞した映画を動画配信にて再視聴。