April01

ナチュラルのApril01のレビュー・感想・評価

ナチュラル(1984年製作の映画)
4.0
順風満帆に越したことはないけれど、ひょんなことで人生が狂うこともある。
終盤でグレン・クローズ演じるアイリスがロバート・レッドフォード演じる主人公ロイに語る時の
2つの人生がある、学ぶ人生とその後の人生。
というセリフが沁みる。

野球という商業スポーツにおける裏の世界を描いている点も良い。
試合中に感づいて、ただならぬ気配を感じてマウンドに行き監督に気取られないように選手同士で言葉を交わす場面、買収されたと思われる仲間にはっきりと言わずに伝えるところが特に好き。

全体的にスローなんだけど淡々と描いて本物の試合を見ているかのような緊張感がある。

ハリエットはどうしてあんなことをしたのか?
病んでいたんだろうけどメンヘラで終わらせず彼女の半生も知りたかった気がする。
ロイはアイリスに訊かれて、惹かれた、とはっきり答えているので。なぜ惹かれたのか、あの時どういう心情だったのか、想像する楽しみがあると言えばそれまでだけど。
気になったので調べたら、Ruth Ann Steinhagenという女性とEddie Waitkusという野球選手の間で起きた事件を元にしているらしく、この事件について読みふけってしまう。巻き込まれると怖いなと思うし、巻き込んだ方も早い段階で家族が治療していれば傷つかなかったのに、などと考える。いずれにしても心の病は今も昔も難しい。

絡んだキム・ベイシンガーも良い。ただしなぜ彼女と付き合うと選手の成績が落ちるのか、少し腑に落ちない。女遊びしてても良い成績残してる人多いでしょうに!とツッコミを入れたくなる。

彼女の存在はハリエットと対になっていて、男を利用してサバイバルしているつもりなのに実は利用されている女の哀しさがあり、ロイに対して惹かれていたかもしれないという、この惹かれは、ロイがハリエットに陥落する盲点でもあったわけだから、銃を向ける点も同じ構造にしているのが巧妙。

若きロイをトライアウトに引率したお爺さんは事件があって何も語らないまま亡くなったのは哀しいし、残念だっただろうなと想像に任せて想いを巡らせジワジワくる。
これはハリエット事件同様に、背景を描かず噂話として知るのみにとどめ、余計な感傷を交えないからこそのメリットかもしれない。

いきなりの終わり方が好き。後日談なし、悪人追求とか成敗とかなし。
ラストの笑顔が眩しくて素敵すぎる✨
April01

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