イチロヲ

D坂の殺人事件のイチロヲのレビュー・感想・評価

D坂の殺人事件(1997年製作の映画)
4.5
美術品の贋作を手掛ける技師(真田広之)が、古書店の美しい未亡人(吉行由実)から責め絵の複製を依頼される。江戸川乱歩の同名小説を映画化している、エロティック・サスペンス。筆者は原作を読了済み。

原作をバラバラに分解してから、短編「心理試験」などの要素を織り交ぜて、再構築させたような内容。物語展開は原作と異なるし、謎解き要素も希薄だが、乱歩作品に一貫している「変身願望」を暗示させる語り口になっている。

昭和初期のレトロ・ムードを再現した映像作りは、まさに唯一無二のもの。真犯人が犯行に及んでいる最中に、外から竿竹屋の売り口上が聞こえてくるあたり、「日常と非日常は隣り合わせ」が痛烈に伝わってくる。

役者陣では、小林少年役を演じる三輪ひとみが、柳瀬茂の原作挿絵からそのまま飛び出してきたような魅力を解き放っている。実相寺監督と美輪ひとみの組み合わせで「少年探偵団」が観たかった。
イチロヲ

イチロヲ