うめ

きっと、星のせいじゃない。のうめのレビュー・感想・評価

3.5
 ジョン・グリーンのヤングアダルト小説『さよならを待つふたりのために』の映画化。主演は『ファミリー・ツリー』で注目を浴び、最近はダイバージェントシリーズにも主演している若手女優シャイリーン・ウッドリー。

 17歳のヘイゼルは幼い頃からがんに苦しみ、現在は肺水腫にかかっており、移動するにも酸素ボンベが欠かせない日々。一人で同じ本ばかり繰り返し読んでいるヘイゼルの姿を見た母親は、がんの支援団体の集いにヘイゼルを連れて行く。そこで、ヘイゼルは、骨肉腫で片足を失った18歳の青年オーガスタスに出会う。ヘイゼルは自分の愛読書をオーガスタスに勧め、その本の共有から次第に二人は親しくなっていく。ヘイゼルとオーガスタスは唐突に終わるその本の結末にもどかしさを感じ、その結末の先を作者でアムステルダム在住のピーター・ヴァン・ホーテンに会って聞きたいと思っていた…。

 原作がヤングアダルト小説だからか、ストーリーがとてもわかりやすい。特にヘイゼルとオーガスタスの恋愛に関しては、まさに十代が憧れるであろうキラキラした雰囲気と展開が詰まっている。二人の関係もそうだが、ヘイゼルとその両親との関係、オーガスタスとヘイゼルの両親との関係など、どの人間関係をみても、とても温かで良好というのも、十代の理想を体現しているようだ。恋愛のどろどろした修羅場とか、両親に思いっきり反抗するとか…そういうシーンはほとんどない。なので「全体的にうまく行き過ぎじゃない?」なんて思うが…この上手く行き過ぎているフィクションを素直に受け入れられない時点で、私もうだめなんだろうなぁとか思ってしまった(笑)

 そんな風に思う理由にはもう一つある。それは、今作の登場人物を俳優たちが嫌らしくなく、押し付けがましくなく演じてくれているからだ。特にヘイゼル役のシャイリーン・ウッドリーとオーガスタス役のアンセル・エルゴート。ヘイゼルの母親も言っていたが、本当に「かわいいカップル」として二人が成立している。二人ともかわいいし、かっこいいのだけれど、どこか子どもっぽさが残っている。あの二人だからこそ、前半の親しくなっていくあの初々しい雰囲気を、母親のような目線で「かわええなぁ〜」と観ていられたのだと思う。もちろん脇を固めるローラ・ダーンもウィレム・デフォーも良かった。今作に出演の3人の若手俳優たちの活躍に期待したい。

 先にも述べたように、展開はわかりやすいものになっているし、病気がストーリーに入り込んでくると、展開のパターンが限られてくるので、どうしても想定内の結末になってしまうことが多いのだが、今回も結局想定内だった。後半〜結末にかけては間延びしてしまった部分もあって、それほど印象深くはないが、前半の十代の恋愛らしい軽やかな展開は観ていて面白かった。病気の描き方は『50/50 フィフティ・フィフティ』を思い出した。病気の中に日常があるのではなくて、日常の中に病気がある描き方。そこに二人の恋愛とちょっと笑える描写が加わって、観やすかった。

 病気を扱った作品を観たことがない人には観やすくわかりやすいので、ちらっとお薦めしてもいいかなぁと思うが、この手のテーマの作品は他にもたくさんあるので、敢えて今作を観る必要もないかなぁとは思う。ただ若手俳優たちの瑞々しい演技は観ておいて損はない。
うめ

うめ