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大いなる沈黙へ ーグランド・シャルトルーズ修道院のodyssのレビュー・感想・評価

3.0
【神聖さは感じられるか?】

フランスの山奥にあるカトリックの男子修道院を撮影したドキュメンタリー。

修道士たちが自室にこもって祈祷や瞑想、読書(むろん聖書です)に時間を費やす様子がよく分かります。

畑仕事や薪割りなどの力仕事も出てきます。修道院は原則として自足自給。ただ、修道院内では作れないものも出てくるので、それらはおカネで外部から購入してくるのでしょう。この映画で物足りないのは、そのおカネはどうやって稼いでいるのかが描かれていないこと。

聖歌を歌ったり、週一回全員で会食をしたり、時々は外出してふつうのおしゃべりに興じたり、冬には雪の野原で滑走を楽しんだりと、それなりに楽しみもあるようです。

で、問題はその先にあります。

こういう風に生きる人もいる。それは分かります。でも不信心者である私には、それ以上の何かがこのドキュメタリーにあるとは思えませんでした。実際、彼らが話す信仰の言葉は、きわめて平凡なものです。聖なるものというより、普通の人間がいるだけに思えました。

むしろ、ナレーションによって差し挟まれる聖書・列王記の一節のほうが、神はおられなかったと述べながら、何か崇高なものの存在を暗示しており、この映画を超えているように感じられました。3時間近い、20年かけて作ったドキュメンタリーより、聖書の言葉のほうが重い。皮肉なものだ、と言うべきでしょうか。或いは私がへそ曲がりなのでしょうか。
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