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大いなる沈黙へ ーグランド・シャルトルーズ修道院のzhiyangのレビュー・感想・評価

3.0
正直結構な時間寝落ちした……。凄く良い映画で美しいのだけれど、長い。ヒーリング効果が高すぎるとも言えなくもないかもしれない……。「ソイレント・グリーン」の安楽死施設?の映像を思い出した。最後の「1984年に撮影許可を求めたら『まだ早い』と言われた。『準備が整った』と返事が来たのは16年後だった」という説明が一番ビビる。

静謐という言葉がとてもよく似合う。雪に埋もれる山奥の修道院で実際に聞こえてくる音なのだろう。揺らぐような光と、祈りの声と、生活のための鍋や斧の音、それに鳥のさえずりだけ。異世界のようだった。ついさっきまで京王線に乗っていたのに……という感じ。鉄腕ダッシュというと大げさだけれど、ちょっとしたDIY映画にも見える。電気や水道が通っているようには見えないけれどホースやノコギリくらいはあるようで、生活の営みの一端を垣間見るのも良いかもしれない。

何度も何度も祈りの姿が映される。新たに修道院にやってくる者もいる。しかし、祈りの理由は語られない。別に彼らは特殊な人間ではなくて、雪の斜面を滑って遊びながら笑いあったりしている。そんな彼らがなぜ神に人生を捧げるようなことをしているのか? 祈る人をただ見つめるとき、その行為もちょっと祈りに近いような気もした。考えてみれば「祈る」のは私と神様の間だけで行われる、かなり私的な行為かもしれない(大通りで祈ってはいけないとイエスも言っていた気がする!)。しかも祈ったところで神様はそうそう簡単には答えてくれないだろう。答えてくれない相手のことを強く思い、考える。その意味でこの映画はやっぱり極めて宗教的な雰囲気を作り出せているのかもしれない。

たまに聖書の句?が差し挟まれる。「一切を退けて私に従う者だけが、私の弟子になれる」と「主は私を誘惑した、私は身を委ねた」だったか、そんな句がよく出てきて印象に残っている。あと、「陽の光は私だけを照らすように感じるが、あらゆるものを照らしている。聖霊もあらゆるものに宿りながら、私だけに宿るように感じる」みたいな言葉も(これは修道士が読んでいた)。
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