ちろる

大いなる沈黙へ ーグランド・シャルトルーズ修道院のちろるのレビュー・感想・評価

3.9
音楽も、ナレーションも一切なし。
ただ静かに歴史を積み重ねた重みのある営みを見つめるだけの169分
これまで内部が明かされたことはなかったベールに包まれたフランスアルプス山脈に建つ伝説的な修道院。
1984年に撮影を申請して以来実に16年の年月を経て撮影許可をもらったその事実と重みをなんとか体感したい!
その一心で時間作りました。
スクリーンで観たらきっとさらに没入感すごいんでしょう。
グランド・シャルトルーズ修道院(この映画を観るまで存在すら知らなかった)の世俗と遮断された彼らの日々の営みは、生まれてこのかたありとあらゆるテクノロジーの恩恵を受け続けている私にとってはとんでもないカルチャーショックの連続。
私は基本ナレーションや音楽のないドキュメンタリー映画は苦手だが、これにおいてはこの形しか有り得ないし、この無駄な編集や演出の中、長さにこそ意味があるのだと思い知らされる。
生涯を己と神の対話のみに捧げて、静けさの中に悟りを見出す。
床をほうきで履き、食べる分だけの野菜を田畑で耕し、寒い冬には火を焚く彼らのその姿は、生活ではなく深い瞑想の最中のような行為のように思え、更にはこれらの映像に没入するほどに観る側も同じく瞑想をしているような感覚に陥る。
中世から続く石造りの聖堂
真っ白に降り積もる雪
春夏秋冬さまざまな色合いを見せるアルプスの自然
現代社会に生きた私たちがすっかりと忘れてしまった森羅万象がここにはしっかりと感じられる。
無駄な演出も、計算したカメラワークでもないにもかかわらず、どのシーンも絵画のように美しく、秋の夜更にぼんやりと鑑賞するのにもおすすめ。
一度もウトウトしなかったと言えば嘘になるが、だんだんとこの静けさが快感になり、見ているだけで少しだけ心が清らかになってくるような感覚に陥る究極のスローライフドキュメンタリー。

因みに学生時代、海外の修道院まで研修に行ったことあるのと、日本一厳しい永平寺に一日修行で泊まりに行ったこともあるけど、それらと比べ物にならないくらいのスローライフでした。
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