【第67回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門出品】
『イルマ・ヴェップ』オリヴィエ・アサイヤス監督作品。カンヌ映画祭コンペで上映され、ジュリエット・ビノシュ、クリステン・スチュワート、クロエ・グレース・モレッツの演技合戦が話題になった。セザール賞では作品賞など6部門にノミネートされ、クリステン・スチュワートが助演女優賞を受賞した。
ああ、なぜアサイヤス作品に自分はこんなに惹かれるのだろう。とても上品で示唆に富んだ作品。
原題は「シルス・マリアの雲」であり、ベテラン女優とアシスタントが借りる山荘の近くで起こる自然現象をあらわしている。
大女優がかつての出世作で逆の役を演じることになり苦悩する。それに付き添うアシスタント、かつて大女優がやった役を演じる新進女優も描かれる。
ひたすら大女優マリア(ジュリエット・ビノシュ)が苦悩するだけの話ではあるが、アシスタントのヴァレンティン(クリステン・スチュワート)との関係、新進女優ジョアン(クロエ・グレース・モレッツ)のスキャンダルなどを真摯に見つめている。
突然にいなくなったヴァレンティン、その後が描かれることはない。まるで最初からいなかったかのよう。その奇妙なバランス感覚は流石アサイヤス。
淡々とした映画ではあるが、演じることの考え方、年齢的な嫉妬と偏見を深く見つめた秀作である。アサイヤスの代表作といっていいだろう。素晴らしい。