ジジイ

ホームズマン/ミッション・ワイルドのジジイのレビュー・感想・評価

4.2
記録。トミーリージョーンズ監督作品。切ないがとてもいい作品だった。西部劇において女性が荒野を旅する必要に迫られ、そのガイドに荒くれ者の男が雇われるという構図は「トゥルーグリット」や「ミークスカットオフ」によく似ている。そして危険な旅を共にすることで少しずつ心を通わせていくというテーマも。史実はよくわからないが、ホームズマン(開拓地で暮らせない入植者を出身地に連れて帰る仕事)という言葉が存在すること、それだけでも移住者にとって開拓時代がいかに過酷な環境であったか想像に難くない。派手な撃ち合いも殺し合いもないが、人間の弱さと強さ、人生の悲哀と儚さを静かに語りかけてくる西部劇。「ブロークバックマウンテン」のロドリゴプリエトによる端正な風景描写も超絶美しい。







以下ネタバレです。







精神を病んだ3人が次第に心穏やかになっていく過程に感動する。そんな中メアリーが唐突に死んでしまう衝撃。ブリッグスに身体を差し出す時にはすでに心は決まっていたようにも思えて切ない。件の二人だけでなく自ら男にプロポーズして何度も何度も断られたのだろう。その絶望たるや想像を遥かに超えたものであり、男まさりに仕事をこなし大好きな音楽にも触れられない報われない人生に疲れ果て、いい加減「自由」になりたかったのかもしれない。しかし自死を選んでもなお、メアリーは決して弱い人間ではなく、他人を思いやり勇気を持って行動できる強い女性としか思えない自分もいる。メアリーに感化されるブリッグスを含め、この複雑な人物造形に開拓史の陰で犠牲となったごく普通の人々に対する監督の切実な慈愛と、同時に強烈なリアリズムを感じるのである。
ジジイ

ジジイ