SANUKIAQUA

フューリーのSANUKIAQUAのレビュー・感想・評価

フューリー(2014年製作の映画)
4.3
第二次世界大戦末期の
ドイツ降伏直前という設定が
絶妙な気がしました。

戦車一台で闘う2つの戦闘が
見どころとなっているんだろうけど
ほんとはそこじゃないんだろう。
銃弾や爆発に色がついていて
なんだかスターウォーズのようで
それはちょっとというのが正直な印象です。

戦争がどちらかが正義でなく悪でもなく
人間性や品位を失わせることが
とある街でのドイツ人女性たちとの
シーンでよくわかります。
音楽やまともな食事マナー、
髭を剃り清潔を保つことで
人間性を保てると考えても
そうはいかないのか戦争なのでしょう。
人が人でなくなる。

また一般市民は降伏することは勿論
戦うことを拒否することもできない。
兵士にも逃げることも
戦いを拒否することもできない。
選択の自由が個人から奪われること
これがとても恐ろしい。

ブラピ演じるリーダードンの元に配属された
タイピストの新兵が様々な戦闘を経て
最後はリーダーと入れ替わりに
英雄に祭り上げられるのが皮肉だ。
彼の表情は最初のそれではなく
哀しみの中に激しい怒りを蓄えた
ドンのそれとそっくりだった。
作品の中で繰り返し描かれる
ただの肉としての人間、
映画の中で知った戦車フューリー号の
仲間たちさえ、後から来た部隊にとっては
冒頭で荷台に乗せられて運ばれていく
肉片と変わらなくなるのだろう。

全編通してキリスト教的な救いを求める
流れがある。
映画は最初から最後まで戦争という
悲惨さに対するうんざり感に包まれている。
なんで宗教ってあるんだろうと
思うことがあるし
現在ではそれこそが戦争の火種なんじゃ
ないかとすら思うんだけど
悲惨な人類の血生臭い戦の歴史の中で
人々が正気を保とうとするために
必要だったのかなと思った。
哀れみと少しの人間性により救われる
ラストショットの十字路はまさに
十字架が描かれた宗教画のようで
その思想の元に救われたように思える。
たとえそれが甘い描写だとしても。
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