ふき

フューリーのふきのレビュー・感想・評価

フューリー(2014年製作の映画)
4.5
第二次世界大戦のヨーロッパ戦線における、泥と死体と血が渾然一体となった戦場を、文字通り戦車が轢き潰していく作品。

ローガン・ラーマン氏演じるノーマンが、ブラッド・ピット氏演じる酸いも甘いも経験したウォーダディと戦争を通じて汚い現実を知っていくという点で、『トレーニング・デイ』のコンビを強く連想した。『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』で小生意気な主人公を演じたローガン・ラーマン氏が、文字通り目の色を変える演技も素晴らしい。こういうのが見たくてデヴィッド・エアー監督作品を見ていると言っても、過言ではない。
とはいえ「このご時勢、犯罪も戦争も必要なんだ! 綺麗なままじゃ生きていけねえぜ!」と思わせておいて、結局は若者が「理想を信じた過去の自分に助けられる」という展開も、『トレーニング・デイ』近いものがある。現実を付きつけつつも、理想を失ってはいけないとも語っているように思える。この辺りのバランスは、両作で脚本を手がけた監督の矜持があるのかもしれない。
序盤と中盤にある戦車戦や、終盤のドイツ軍大攻勢も見応えがあった。誰が戦っているのか分からない暗闇での戦闘は、「個人を剥奪され消費される」戦争そのもので、内容や演出が似ている『スーサイド・スクワッド』の戦闘にはなかった感動があった。

難点と言えば、戦闘開始直後に青と緑の光線が走った時には、正直『スターウォーズ』を思い出して「ええ!?ww」となってしまった。実際の曳光弾は、それこそ湾岸戦争の荒い映像でしか見たことがないのだが、現在はあんな感じなのだろうか。
中盤にあるドイツ人女性たちとの会話&会食が異様に長いのも、少々退屈だった。すぐに重要なシークエンスだと分かるのだが、ジョン・バーンサル氏演じるグレイディが本気で気色悪いのもあって、イヤなシークエンスであることは否定できない。

余談だが、シャイア・ラブーフ氏がいつの間にか、新人を引っ張るポジションになっていたのには驚いた。氏を最後に見たのは『トランスフォーマー:ダークサイド・ムーン』なので、こんな大人な役柄もできるのか、と新作を見たくなった(本稿執筆時点で本作が最新作)。
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