黄色の蝶々

マルケータ・ラザロヴァーの黄色の蝶々のネタバレレビュー・内容・結末

マルケータ・ラザロヴァー(1967年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

評価が難しい映画だった。良いか悪いか好きか嫌いかの判断がつきかねる。悪くはないし嫌いでもないが良いとも言えず好きとも言えない。叙景詩のようにも感じた。
表現方法が独特で、まず初めに驚いたというか困ったのは音楽で、画面に誰もいないのに、会話が聞こえる。ナレーションかと思うとそうではない。その内人物が映るが、話している人数より多い。誰も口元が動いていないように見え、誰と誰が話しているのか分かりづらい。また会話内容も周知の事実のように進んでいくが説明がないのでシーンや関係性を理解するのに苦労した。
次は、カットや画の力強さに圧倒された。どこのホラー映画の殺人鬼か一族を殺された恨みなのかと思うような、ポスターにもなっているマルケータの上目遣い。父親の狂人の如き笑い声と振る舞い。木の隙間から息を殺して盗み見るような目。殺戮とエロスにまみれた作品かと思うようなカットもあったが、あれらはただの日常の光景だった。生きるために盗み、殺す、ただの生活だった。宗教の描写がたくさん出てくるが、信じているようで実は信じてないのでは?と感じた。当たり前の人間の生活を描いただけで神は描かれているのに、介在していないように感じた。女達はみな運命に翻弄されているようで、結局最後まで生き残っている。男達に罰をというが、雄鹿は雌鹿を手に入れるために戦うという話をしたことから、戦いが自然の摂理だと伝えたかったのだろうか。最後のシーンでマルケータは尼僧達に救われるかと思ったが、あなた達の信仰は現実的ではないとマルケータは救いの手を拒んだ。自らの意思で愛する者が死んだ厳しい現実に戻っていく。その愛する者というのも自分を父の元からさらって、犯した相手なのだが…。
そんな彼女たちの生活をただ観た、という感想だ。

-あらすじ--------------------------
13世紀半ば、動乱のボヘミア王国。修道女となることを約束されていた少女マルケータは、領主とは名ばかりの父・ラザルと敵対する盗賊騎士コズリークの息子・ミコラーシュと恋に落ちる。彼女の心とは裏腹に、増大する王権と二つの部族間の衝突は激化していき……。キリスト教と異教、人間と野生、愛と暴力に翻弄される人々を描いた作品。
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