Ricola

マルケータ・ラザロヴァーのRicolaのレビュー・感想・評価

マルケータ・ラザロヴァー(1967年製作の映画)
3.5
中世のチェコの動乱とその荒波にもまれた少女の運命が中心に描かれた、ダイナミックで生命力に満ち溢れた作品だった。

野生味溢れる男たちの魂の雄叫び、血しぶきや飛び交う矢におののく一方で、自然の豊かさが美しく描かれる。


カメラは縦横無尽に動く。
このカメラワークが、作品の特徴であるダイナミックさや生命力をよく表している。
特に「合戦」のシーンやアダムが逃げ惑うシーンにおいては、カメラは走る人々を追いかけるように、かなり近くにまで接近する。
黒澤明監督作品から影響を受けているそうで、なるほど、たしかにアクションシーンの迫力と人々の動きをとらえて掴み続けるカメラワークである。

その一方で美しい自然は、ゆったりとした時間のなかでしっとりと描かれる。
春のあたたかな木漏れ日のなかで眠りにつくマルケータたちや、鹿の群れが横切る様子を森の奥から見つめるショットなど、柔らかな光が差し込む様子が美しい。
アクションシーンとは打って変わり、白黒映像の濃淡のコントラストも弱まったように見受けられる。

チェコの歴史についての予備知識がなくとも、人類の普遍的な対立と人間の根本にある愛情を見つめるだけでも十分楽しめる作品だった。
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